とある冒険者記者の音声記録石に残っていた記録 ラベル ・探検家バンディについて NO.3 駆け出し冒険者の少女へのインタビュー =再生します= ――音声記録NO.3……それではバンディさんとのご関係についてお聞きします 「ええっと、はい!よろしくお願いします!」 「関係といいましても、会ったのは一度だけなんですがその時に助けていただいて!」 「流石は伝説のソロ活動の遺跡探検家!罠と隠密で魔族の将軍討伐した英雄!」 「いやーカッコよかったのなんの!ああいう女性憧れちゃいますねぇ!」 ――その時の事を詳しくお教えいただけますか? 「あぁ!失礼舞い上がっちゃいました……」 「あれは先々月、西部の魔道遺跡の浅層の魔物の間引きの依頼に行った時でした」 「あそこは魔物もそんなに強くないし、慣れたもんですから一人で依頼をこなしてたんですけど」 「珍しいことに罠が再生されてまして」 「足をバチーン!やられちゃって動けなくなっちゃったんですよ」 ――罠が再生されるのは珍しい事なんですか? 「ん、そうですねぇ……中層や深層なら毎日のように罠が発生するらしいですけど、浅層でというとなかなか無いことですねぇ」 「で!聞いてくださいよ!罠から抜けられなくて、このまま干物になるか魔物のご飯になっちゃうんだぁってヒンヒン泣いてたらですよ!」 「スッとバンディさんが現れてたんですよぉ!……音もなく表れたんでゴーストだって勘違いして叫んじゃったんですけどね」 「『どうしたんだい?冒険者のお嬢さん』って!魔物の間引き依頼に来て罠に掛かって足が潰れて動けないって説明したら罠から助けてくれまして!」 「『遺跡の中でアイテムを施すのはポリシーに反するから出来ないけど、護衛ぐらいならしてあげるよ』って結局街まで護衛してくださいまして、探検家御用達の罠解除の道具のお店まで教えてくれたんですよ!」 「いやーそれにしても強いのなんの!私を担いで、有名な隠密と罠も使えないのにナイフ投げで魔物をサクサク倒していくんですよ!」 「さすがは魔族の将軍を倒した方だった思いましたよ!」 ――ほかになにか気なる点はありましたか? 「気になる点ですか?そうですねぇ……」 「罠避けが凄かった……とかですかね。まるでそこにあるってわかるように避けてましたよ」 「一流の探検家ともなると違うんですねぇ」 ――ありがとうございました =再生終了= ########################### 遺跡の深部に残されていた破損した音声記録石の記録 モンスターの胃から発見されており破損が激しい ラベルは一部が溶け読み取れない ・(読み取れない)について NO.7 熟練探検(読み取れない)ンタビュー =記録石が破損しているため一部再生できません= =再生します= ――ザザッ(音)声記録NO.7……それザザザッ(ではバンディ)さんについて 「あぁアイツについてな。お前、金払いもいいしインタビューに答えてやるよ」 「……アイツが別の遺跡に潜ってるのは間違いねぇんだよな?」 「オレも死にたくねーぜ」 ――えぇ、ここからザザッ(3日)ほどの距離遺跡に潜ってるとザザザッ(聞いてい)ます。ここに居る事はないでしょう 「本当かよ?んじゃいいんだけどよ」 「んでアイツについてか……アイツはオレに言わせれば同じ穴の狢、それも力のある分ヤベー厄介なやつさ」 ――同じ穴の狢……といいますと? 「あぁん?わかっててオレに聞きに来てんじゃねーのかよ」 「オレと同じ、悪党だって言ってるんだ」 「遺跡の深部まで来て宝ザザッ(漁り)するのは、まあいいが」 「遺体から荷物ザザッ(漁りをし)たり、漁る為の遺体を増やしたりしてるザザザッ(のさ)」 ――そんなザザッ(こと)許されるんですか 「許されるだなんてチャンチャラ可笑しいぜ、ニーチャン」 「ここは遺跡の深部。王国法も及ばぬ魔境の地、その奥深くだ」 「人が死んだからって、衛兵の連中がここまで捜査に来るか?ザザザッ(くるわけね)ーだろ?これねーさ」 「そもそもここまでくるザザッザザザッ(連中なんて)死体が転がってたってモンスターがやったか人がザザザッ(殺したかな)んて気にしねー連中ばっかだ」 「その死体だってほっときゃモンスターに食われるしな」 ――………… 「んで何の話だったか……あぁアイツの話だったな」 「大体よぉ隠密からのザザザッ(不意打ち)が得意だったり」 「わざわざ遺跡の対人用トラップを外して持ち歩く人間がまともな訳ねーだろ」 「遺跡の外じゃ、だいぶオギョーギ良くやってるみてえだが」 「なんだっけ、ザザッ(魔族)の将軍の……」 ――冒険者ギルドの依頼で、罠と隠密を用いてザザザッ(魔族の将軍)を討ったエピソードですか 「そうそう!罠を大量に仕掛けて、ザザザッ(動けなくなった)ところを一突き!」 「いやぁ上手くやったもんだよな。すっかり英雄様で、罠を持ち歩いてても疑うやつもイネーときたもんだ」 「フツー疑われるぜ対人用の罠持ち歩くなんて何に使うのか!ってよ」 「魔族をザザザッ(罠で)打ち破った英雄様なら持っててもおかしくねーってな。わざわざ遺跡内ザザザッ(で罠を確保する)必要ねーんだ羨ましい話だぜ」 ――それが、あなたから見た彼女の実像ですか 「おぅともよ。間違いねえさ5人組のパーティを潰したのをこの目で見たんだからな」 「あの時はアイツが持ちきれずに置いて行ったアイテム奪えてよ。儲かったもんよ、がはははは!」 「疑ってるな?それじゃ2か月前にアイツがザザッ(古物商)にザザザッを持ち込んだか確認してみろよ。ザザッザザザッザザッ(売買記録が残ってるはずだぜ)」 「んまあザザザッ(遺跡)の外じゃ本当に行儀良くしてるんだろうよ」」 「衛兵どもの捜査能力の凄まじさはオレら悪党が一番よく知ってるからな」 「だが遺跡の中ではザザッ(違う)」 「だから遺跡に複数で潜らずもっぱらソロで潜ってるんだろうよ」 「やれ魔族のザザザッ(将軍殺し)の英雄様だ、やれザザッ(魔物遺)跡を踏破しザザザッ(英雄)だの言われても」 「オレと同じ悪党なのさ!」 ――…… 「あーあれだ、二つ名、アイツなんて呼ばれてるんだっけ」 ――ザザッ(遺跡探索)家少女と…… 「可愛らしい二つ名だことよな!」 「オレから言わせれば……ローグ」 「ザ・ローグ(ならず者)ってな!がはザザッ(はは)はは!」 「なんだよ二―チャンそんな顔して。化け物でも後ろにい――ザザザッ」 =破損状態からこの先は再生できません= =再生を終了します= ########################### 捜査官:著 2人分の遺品については遺跡深部にて回収されたものである。 戦闘状況からアシッドタイガーに襲われたものと考えられる。 これは同遺跡同深部にてアシッドタイガーを討伐した冒険者グループがアシッドタイガーの体内より回収したものである。 追記:遺品にあった破損した音声記録を確認したところ、アシッドタイガーの特徴的な呼吸音が確認されなかった。二人の会話の音以外は全くの無音であった。これは彼らを直接害したのは別の何者かであり、アシッドタイガーは彼らを食しただけであると考えられる。追加の捜査が必要と考えられるが、被害現場が遺跡深部と辿り着くのも困難な地であること、魔物等捜査員に大変な危険があることから捜査が許可されなかった。