――『世界で最も高価な男』―― 「この世界に、無料で手に入るものは一つもありません。」それが彼の口癖だった。 ヴェルフェインは裕福でも貧しくもない、小さな商家に生まれた。 幼い頃から人の心を読むことに長け、言葉一つで喧嘩を止め、交渉一つで大人を納得させた。 十歳の頃には商会の大人たちを相手に利益を出し、十五歳で自ら商会を立ち上げる。 彼は戦うことよりも、「勝負そのものを始めさせない」ことに価値を見出していた。 「戦争は高くつきます。」 「取引なら、お互いに利益がありますよ。」 それが彼の流儀だった。 彼は旅を続けた。 神殿。 王国。 魔導都市。 辺境。 どこへ行っても同じだった。 奇跡には信仰が必要。 魔法には魔力が必要。 王には民が必要。 命を救えば、誰かが犠牲になる。 何かを得れば、何かを失う。 例外は一つも存在しない。 ヴェルフェインは確信する。 「世界そのものが、一つの巨大な天秤だ。」