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【韋編悪党&終戦乙女】トゥム/小人のワルキューレ

《CLASSIFIED》 個体識別名:トゥム(Tum) 身長:80cm 所属:チームⅡ“Invader” 状態:生存(監視中) 【宿魂情報】 名称:[NO DATA] 出身:[NO DATA](現:[NO DATA]) 確保理由:[NO DATA] 状態:[NO DATA] 備考:[NO DATA] ※[削除済み])何も見れねぇけど? 告知:外部からの度重なる情報改竄を防ぐべく当該“終戦乙女”のデータを完全に削除した。 当該“終戦乙女”の情報閲覧においては[削除済み]の認可を受けた者のみ“M”より口頭で伝える。 示達事項:チームⅡにおいては当該“終戦乙女”の監視を徹底せよ。 特別示達事項:当該“終戦乙女”は[削除済み]による[削除済み(以降“甲“とす)]に関わっていると思われる。 [削除済み]は“甲”の早期対処と[削除済み]の確保を速やかに実行せよ。 ※[削除済み])つうか、こいつ勝手に何処行ってんだよ? 警告:[削除済み]に入力許可は下りていない。チームⅡは当該“終戦乙女”の監視と“甲”の対処のみを徹底せよ。 ※チームⅡトゥム)凄い大きな声の王様だよ!う~ん、でもラクダさんは何処にいるの? https://ai-battler.com/battle/58e817a2-877c-455a-8b83-f96501f0441b ※チームⅡトゥム)美味しいし、罠にもなる!バナナって最強の食べ物だよね! https://ai-battler.com/battle-result/cm18nefiu01r5s60oyifd9dvk ──────────────────  トゥムは夢を見ていた。  夢の中でもトゥムはやはり冒険中。 ♫高い草はガサガサと  水溜まりはジャブジャブと  歩く弾みでおさげが揺れて  吹いた風に鼻歌を乗せて  今日も暢気に冒険さ  黒猫ブラッキーの尻尾はユラユラ  小人のトゥムのお顔はニコニコ  凄い王様と出会うために  どんな艱難辛苦もなんのその  手製の罠で撃退するけど  敵わぬ相手にはすたこらさっさ  それで良いのか、小人のトゥムよ  それで良いのが、小人のトゥムだ♪ 「……ふぇ?───ギャンッ⁉」  心地良い夢を見えていたトゥムは、顔に何かくすぐったいモノが触れている感覚で目覚める。  寝起きの彼女の眼前に黒く美しい体毛の愛猫(トゥムには懐いていない)ブラッキーのお腹。ブラッキーは大きくあくびをすると、容赦なくトゥムの顔面へお腹を下ろした。  手足をバタつかせるトゥムだが、小人の力など高が知れている。  そんなトゥムの様子を暫く見ていたブラッキーは、猫特有のマイペースさを前面に押し出した動作で彼女の顔面から身体を離す。 「……はあッ⁉ ふぃー、どうしたブラッキー? ご飯か?」  常にポジティブなトゥムはブラッキーを怒る事もなく──日常茶飯事で慣れてもいる──声をかけて撫でようとするも、ブラッキーは華麗にかわしてミャオと一鳴き。  マイペースなブラッキーらしい仕草にトゥムは笑う。しかし頻りに樹上へ視線を向けているブラッキーに、トゥムは(テテテッと)小走りで近寄って同じく見上げる。 「やっとお目覚めか」  樹上に居たのは一羽の烏。  真っ黒な体毛はブラッキーの様な美しさと言うよりは、闇の底を覗いた様な不気味さと得も言われぬ悪意を漂わせていた。 「ああ、そう構えるな。何も悪さをしようという訳ではない」  咄嗟に身構えて警戒するトゥムに烏は両翼を広げて飛び出すと、トゥムの少し前へと降り立つ。   自分よりも一回り大きい烏が目を爛々と光らせて見つめる様に、トゥムは怖じ気を一瞬感じたが気を引き締めて一歩前へ踏み出す。 「悪さの塊みたいな風貌ですけどね。如何なる御用でしょうか、烏さん?」  ブラッキーの時に見せていた小人らしい口調は鳴りを潜め、今のトゥムは凛とした面持ちと丁寧ながらも一切の油断を許していない声音で烏へ相対する。 「クククッ……韋編悪党で終戦乙女、小人でありながらワルキューレ……強引な差し込みにこのような解答を出すとは面白い」 「何を言って……ぎゃんッ!?」  烏の発言に首を傾げていたトゥム。そんな彼女の額を烏が翼で小突いた。  衝撃こそ無かったが不思議な事にトゥムは意識が沈下していく感覚を得ていた。  身体がゆっくりとゆっくりと泥濘に落ちていく──(サッと)視界が暗くなる寸前、トゥムは自らの口から紡ぎ出された“男性の声”を聞いた様な気がした。 「初めまして提督。無理に引きずり出した事はお詫びする」 「……用件は何かね」トゥムの口から出た男性の声。  そう今のトゥムは体内に宿した“とある人物”の魂が表に出ている状態。  その変化を黒猫ブラッキーは察すると、その声を懐かしむかのようにトゥムの頬へ頭を擦り付けてくる。 「状況は既に知っているだろう。終戦乙女による人類の虐殺──これを防ぐべく私達に協力して欲しい」 「成程、このワルキューレが小人でもある理由は“君”の介入が原因か。強引なやり方と言わざるを得ないな、おかげさまで連中からは相当警戒をされている」  トゥム(いや提督たる人物)はブラッキーの頭を撫でながら答える。 「彼女達に宿された魂がもう少し古ければ、私の介入も上手く行くのだがな。だが“何もしなければ、何も起こらない”のだ。それで協力してくれるか?」 「断る」男はすっぱりと言ってのけた。 「……何故だ?」 「私は既に死んだ身、歴史の影法師に過ぎない。今を選択するのは今を生きる者のみが持つ権利だ、この小人の選択を過去の私が決めてはならない。協力が欲しいのなら、“トゥム”に頼むのが筋だろう」  男の答えに烏は唸る。  そも、烏がトゥムに頼まなかったのは韋編悪党の活動が終戦乙女側に露見する事を危険視した為だ。  終戦乙女から敵視されている身としては当然の考えでそれを訴えれば、トゥムも理解を示すのではと考える者もいるだろう。  だがトゥムが烏を見て言った“悪さの塊みたいな風貌”の通り──烏の真意はトゥムを操作して“とある物語”を面白可笑しくしようと企んでいた。  トゥムの発言で真意を悟られまいと、彼女の魂を経由して操ろうとした策は水泡に帰したのだ。   「……その言葉を後悔するなよ」  苦し紛れの言葉にも聞こえるが、烏は“この失敗”も物語として愉しんでいる。 「私はただ見守るだけだ、後悔も何もない」  その言葉を最後にトゥムは目を瞑る。 「……ふぇ! あ、あれ、眠ってた?」  ぱちりと大きな目を開くトゥム。意識の入れ替わりにより、先程まで懐いていたブラッキーは人が変わったように離れてしまう。 「君は──何を目的としているんだ?」  翼を広げて烏は手近な枝へと飛び乗る。 「それは勿論! 凄い王様に出会うことさ……ああ、出会うことですよ」  トゥムはサムズアップで答える。  その答えは烏にとって最も好ましいモノ。 「そうか。ならば、君の道程に祝福を祈ろう──君の物語に“彼らの愛し子達”による加護があらんことを」  意味深な言葉を告げて飛び去る烏の姿が見えなくなるまでトゥムは警戒を緩めず、やがてホッと胸をなでおろす。  平静さを保っていたとは言え、あの烏は凄まじい悪意と愉悦を向けていた。  だが、足を止める理由にはならない。  終戦乙女としての目的ではなく、この身の何かが強く訴えかける目的。  それが何を成すかは知らない。  それが何処にあるかも知らない。  でも、目指しているなら道は自ずと開く。 「さぁ、行こうかブラッキー!」  トゥムの明るい声に──ブラッキーは“ニャオ”と鳴いた。