戦闘ですか? はい、喜んで。 沢山学ばせていただきますので。 https://ai-battler.com/battle/32399801-684f-431b-8a17-13f858712701 「やっほ! 砂風呂屋さんは順調かしらロメル?」 静かな空間に響くのはトリヒの明るい声。彼女の背後には武装特戦隊を引き連れたハンサの姿も見える。 思わぬ彼女達の来訪にロメルは驚いた。だが、内で爆ぜた感情は彼女の表情を変化させる事はない。 感情をより学ぶ一環としてロメルが始めた砂風呂屋。元より『知る人ぞ知る』特定の相手に向けたモノの為か、客足は微々たるもの。 この手の店は多い。ロメルにその気が無くとも、結果的に『数撃ちゃ当たる』有象無象の一つになってしまい、ここ最近は閑古鳥状態。 料金を取らないで何が店か、と言われる事も暫しありロメルも近いうちに店を畳もうと考えている次第だ。 極々少数の相手にしか喜ばれないモノが、果たして存在して良いのか。答えはNO。 何より最近はワルキューレ達の監視も広くなりつつあり、潮時だろう。 「そんな周囲の事なんか気にしちゃ駄目よ。アンタがやりたい事をやれば良いの!」トリヒは言う。 「そうだロメル。何より私達は今後も利用するのだから、何時でも開けておいてくれ」ハンサが続ける。 二人にそう言われてしまったら致し方ない。何より自分なんかよりも、必死に抗っている彼女達だ。 ロメルは素直に従うと、いそいそと服を着替え始めた時だ── 「ロメル、その服は着ない方が良いな」 ハンサの言葉にロメルは己の体を見る。 全身に走る無数の傷跡。これまでの戦いで受けた傷は痛々しい跡となって、ロメルの美しい肢体を痛ましくさせている。 「傷だらけの女の子が眼前にいたら、みんな驚いちゃうわよ。はい、このローブなら傷を見せる事もないわよ」 トリヒから手渡されたローブを着る。 すっぽりと全身を覆い隠すソレはたしかに、ロメルの生々しい傷跡を隠してくれた。 二人は善意だったのだろう。 だが、それでもロメルは己の内がキュッと締め付けられる感覚を得る。 「……私に存在価値はあるのだろうか。誰も救えず、強くもなれない──誰も幸せにできない私に価値は……ああ、無いのだろうな」 無表情で抑揚のない声音で呟いたロメルの言葉は、吹いた風にかき消された。 「……よし」 合間を縫って店に来たロメルはローブを丁寧にしまう。 そして取り出したのは白い服。少し前にやけに饒舌に話す洒落た狼から貰った服だ。 「……ふむ」 似合うだろうか。 それ以前に体の傷が目立たたないだろうか。 不快に思われないだろうか、どうしても考えてしまう。 そう悩むロメルへ──宿魂の将軍が優しく答えてくれる。 『君を好いてくれる人達が、そんな事を思う筈がないよ。彼らは君が好きだから、ここに来てくれるんだよ』と。 「……はい、わかっています将軍」 ロメルは頷き袖を通す。 吹いた風に彼女の髪が靡き、白い服がはためく。 まるで砂漠に咲いた──一輪の花のように。