魔物とは本能的か否かに依らず、人間や他の種族を喰らい糧とするような印象を抱かれる。アルゲナ・ミレインは、その様な印象に真っ向から反する存在である。人の形をしており、温厚で高い知性を持ち、研究熱心。不必要な争いをせず、どんな生物と対峙しても共生の道を探る。 アルゲナの祖先は、深海に生きる魔物だった。それが進化を繰り返し、変異を遂げた末に彼女が生まれた。仲間たちの中でも最も水深の浅い場所で育ったアルゲナは、常に地表を見ながら成長した。 この時から、『地表とはどのような環境なのか、どのような生物が生息しているのか』と知的好奇心をくすぐられていた。変異型ゆえの高い知性が、彼女を駆り立てたのだ。 やがてアルゲナは、地表への進出を目指し始めた。水棲生物特有の体でどのように歩くのか、地表に存在する生物で何が危険で、何が安全か。必要な事を一つずつ洗い出し、解決への可能性を検討した。 そうして、彼女は今のスタイルを確立した。地盤として存在する考えは、『文明レベルが高い人間を重要視する』事だった。そのため、可能な限り人間に親しみやすい自分を作り出す事となる。柔軟な体を人間の女性型に変化させ、人間にとって馴染みある外観となる。人語を学び、必要に応じて意思の疎通も可能とした。 自分とは異なる種族の生命について知るべく活動している事から、自らを『異種族生物学の研究者』と称し、人が自分を認識、区別しやすくするために名前を名乗るようにした――『アルゲナ・ミレイン』と。 役割と名前を持ち、外観などから来る第一印象を人に近付ける事で、人間社会に溶け込もうとしている。 アルゲナは、自分とは全く異なる、地表に生息する人間や魔物などの様々な生命現象を追い続けている。 それは自分の知識欲と同時に、他種族との共生を目指そうとする彼女の穏やかな性格にも由来している。深い海の底から始まった優しい魔物の挑戦は、まだ始まりに過ぎないのだ。 なお、人型とはいえ触手髪や体壁からの管、白金色の粘膜肌といった魔物由来の見た目から、まだ人間には一見で怯えられたり警戒される事も多く、強引な手段を取りたがらない彼女の性格も相まって人間の研究には特に苦労しているのだと言う。 幸いにも、戦わずに生存する事を徹底した祖先から受け継がれた体質――治癒効果のある粘液や包帯として利用できる薄膜のおかげで一部の人達からは有難がられ、少しずつだが理解を得られてはいるようだ。