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【旅の青年剣士】ロック

ワールドの旅の栞🔖 場所:叡智の書都ライブラリアの中央図書館 叡智の書都ライブラリアはいつものように古紙の香りとページをめくる音に満ちていた。石畳の回廊を歩くロックとミアナは、広大な書架の間で珍しい古巻物を探していた。ロックは武骨なブロードソードを腰に下げ、クロークを羽織った質実剛健な姿で、ミアナの後ろを無言でついていく。ミアナは青い学者ローブを翻し、銀の留め具が光るマントを着て、活発に本棚を指差しながら興奮気味に話す。 「見て、ロック! この巻物、トラキア大陸の東部遺跡についてよ。私の解読で、失われた魔法の記述が出てくるかも!」ミアナの大きな瞳が輝き、ツインテールの黒髪が揺れる。彼女の口調はいつものように少し上から目線だが、根の優しさがにじむ。首元の叡智の守護頁飾が、知識の輝きを放っていた。 ロックは無愛想に頷き、「ああ、面白そうだな」と短く返す。直向で配慮ある彼の言葉は、ミアナの熱意を静かに受け止める。旅の剣士として、特殊能力に頼らず、地に足ついた判断を心がけるロックにとって、こうした知的探求は新鮮だった。勇者の血の名残りで、人々の助けを求める声が直感的に聞こえる体質が、ここでも微かに働いていた。 二人が一角の閲覧スペースに腰を下ろした時、事件は起きた。ミアナの周りに、数人の学徒が集まってきた。彼らはライブラリアの貴族階級の出らしい、派手な刺繍のローブを着た若者たち。リーダー格の男、瘦せた顔に眼鏡をかけたエリックは、ミアナを睨みつける。 「ふん、天才少女ミアナ・デレツンか。飛び級で叡智の塔を抜けたって聞いたが、そんな子供が古巻物の解読を? 笑わせるなよ。お前みたいな平民上がりが、知識の独占を邪魔するんじゃない」エリックの声は嫉妬に尖っていた。ライブラリアの政治的問題、貴族と平民の対立が、ここに表れていた。中央図書館の管理権を巡る陰謀が影を落とす中、ミアナの才能は彼らのプライドを刺激したのだ。 ミアナは最初、ツンデレらしくズバズバと返す。「は? あなたたちこそ、古い学説にしがみついてるんじゃないの! 私の解読の方がよっぽど進んでるわよ、バカ!」だが、学徒たちは数を頼みに詰め寄る。「異端思想の書物を広める気か? 検閲を逃れるために、子供の仮面を使ってるんだろう!」言葉は悪質で、ミアナの小さな肩を押す者まで現れた。彼女の瞳に、わずかな怯えがよぎる。天才ゆえの自信家だが、幼さゆえの孤独感が、こうした場面で顔を出す。 ロックの耳に、直感が響いた。人々が助けを求める声――ミアナのそれは、はっきり聞こえた。彼は静かに立ち上がり、細身筋肉質の体をエリックの前に滑り込ませる。「やめろ。彼女の解読に問題があるなら、議論で勝負しろ。手を出すのは、知識の都の風上にも置けねえ」ロックの口調は無愛想だが、配慮が込められ、ブロードソードの柄に手をかける仕草は威圧的だ。 エリックは嘲笑う。「なんだ、お前は? ただの旅の剣士か。剣で知識が守れるとでも?」だが、ロックは動じない。環境を利用した立廻が持ち味の彼は、周囲の本棚の高低差を活かし、素早く位置を取る。学徒の一人がミアナに近づこうとすると、ロックの鉄革ブーツが石畳を叩き、払いの動作で腕を弾く。痛みを与えず、ただ制止する――地味だが安定した技だ。 「不可能な事は後に回せ。まずはお前らの嫉妬を片付けろ」ロックの言葉は現実的。超常を柔軟に受け入れる思考で、ミアナの魔法の才能を「現実の力」として判断し、守る。学徒たちはロックの煤けた黒髪と細身の筋肉質な体躯に、旅の強靭さを感じ、たじろぐ。ミアナが立ち上がり、風の魔法を軽く呼び起こして周囲にそよ風を起こすと、事態は収束した。「ほら、ロックが言ってるでしょ。議論で勝負よ!」彼女の声はキツいが、言い過ぎを謝る素直さが加わる。「まあ、あなたたちの努力も認めるけどね……少しは」 学徒たちは肩を落として去っていった。ミアナはロックの腕に軽く触れ、「ありがとう、ロック。あなたがいなかったら、面倒だったわ。でも、私だって魔法でどうにかなったのに!」ツンデレの褒め言葉だ。ロックは焚火を好むように、静かに微笑み、「ああ、次は芋煮でも作るか。集中力が高まるだろ」と返す。ミアナの頰が少し赤らむ。 その夜、二人は永遠の書庫のツアーに参加した。無限に広がる本棚を巡り、叡智の紅茶を飲みながら、ミアナは即興の詩を作り始める。「剣士の守りと魔法の輝き、知識の道を共に……」ロックは聞き役に徹し、旅の絆を深めた。ライブラリアの静謐な空気の中で、日常の小さな事件は、二人の信頼を一層強めた。