ログイン

「薮医者」或いは「美しいだけの地獄」 有栖川 鏡子(アリスガワ キョウコ)

夕火の刻、粘滑なるトーヴ 遥場にありて回儀い錐穿つ。 総て弱ぼらしきはボロゴーヴ、 かくて郷遠しラースのうずめき叫ばん。 『我が息子よ、ジャバウォックに用心あれ!  喰らいつく顎、引き掴む鈎爪!  ジャブジャブ鳥にも心配るべし、そして努  燻り狂えるバンダースナッチの傍に寄るべからず!』 ヴォーパルの剣ぞ手に取りて 尾揃しき物探すこと永きに渉れり 憩う傍らにあるはタムタムの樹、 物想いに耽りて足を休めぬ。 かくて暴なる想いに立ち止まりしその折、 両の眼を炯々と燃やしたるジャバウォック、 そよそよとタルジイの森移ろい抜けて、 怒めきずりつつもそこに迫り来たらん! 一、二! 一、二! 貫きて尚も貫く ヴォーパルの剣が刻み刈り獲らん! ジャバウォックからは命を、勇士へは首を。 彼は意気踏々たる凱旋のギャロップを踏む。 『さてもジャバウォックの討ち倒されしは真なりや?  我が腕に来たれ、赤射の男子よ!  おお芳晴らしき日よ! 花柳かな! 華麗かな!』 父は喜びにクスクスと鼻を鳴らせり。 夕火の刻、粘滑なるトーヴ 遥場にありて回儀い錐穿つ。 総て弱ぼらしきはボロゴーヴ、 かくて郷遠しラースのうずめき叫ばん。 鬱くしき乙女侍らせ酔空眺める。 魔焼かしに接吻を。梟首を絶たえよ。 『あゝ愛しの鬼未よ。彼の月孔にも似た君の玩貌は  喜麗で鬱くしい、陽耀のやうだ』 ──────────────────────────────────────────────────── なお、余談だが有栖川はチェーンソーなどを愛用するが努々使いこなせていない。理由は主に二つ。一つ目は「瑕疵転嫁」によって肉体が幼い為、チェーンソーや斧などの武器を振り回す筋肉がないこと。そして二つ目は「瑕疵転嫁」によってカウンターという形で攻撃が出来る為、そも武器など使いこなす必要がないからである。なので確実にとどめを刺す瞬間や、自傷行為などにしか使わないので半ばアクセサリィと化している。