世界には「天律」と呼ばれる絶対の法則が存在した。 人は生まれ、愛し、憎み、そして死ぬ。 その循環こそが世界を支えていた。 しかし、ある日。 天は一人の少女を「世界の歪み」と断じた。 その少女の名は――拶希(さつき)。 家族は殺され、村の者は彼を「災厄」と呼んで石を投げた。 彼女は何もしていなかった。 ただ、生まれただけだった。 そんな彼女にも、1人の友がいた。名は「幸坨」彼は村の中でも唯一彼女と仲良くしていた。 しかし、事件は突如起こる。幸坨が殺されたのだ。村の者は口を揃えて彼女の所為にし、彼女に暴虐の限りを尽くした。 そして、彼女は殴られ蹴られ酸をかけられ。その際に1人の村人の手に、血の付いたナイフが握られていたのを確かに見た。 瀕死の彼女が辿り着いたのは、世界の底に眠る「冥生の祭壇」。 そこで封印されていた神にも悪魔にも属さない存在が囁く。 「世界を憎むか」 「ならば世界そのものを裁け」 その瞬間、殺希は禁断の権能を得る。 【救慈偽】 その力は剣でも魔法でもない。 「存在そのものに死刑判決を下す権利」 その日から、彼女の名は希望を表す「拶希」から絶望と殺戮を表す「殺鬼」となった。自身の名を捨ててまで、復讐を完遂するのだ。 最初に裁かれたのは、 彼女を殺そうとした村長だった。 肉体は消えない。 だが、 村長が「村長だった」という歴史だけが消えた。 誰も村長を知らない。 村長の家族も、村の者も。 最初から存在しなかった。 やがて世界は恐怖する。 軍隊も勇者も神々も敵わない。 殺せない。 封印できない。 逃げられない。 彼女は「戦う」のではない。 ‘’判決‘’を言い渡すだけだから。 そんな復讐を続け早1年、周囲には誰も居なくなった。 敵も味方も。 神も概念的存在も。 人間も。 昔まで賑わっていた地は、ただ荒れ果てただけの崩壊都市に様変わりしていた。 その時、彼女は初めて気づく。 自分を憎んでいた世界を滅ぼした瞬間、 自分を「拶希」と呼んでくれる存在も、もういないことに。 そして彼女は、自らに最後の判決を下そうとした、その時だった。 1人の亡霊が彼女の肩に手を置く。 その招待は、かつて村の者に殺されたはずの「幸坨」だったのだ。彼は彼女を「拶希」と呼ぶ。もう彼女の名は 「殺鬼」のはずなのに。その時、彼女の目に少しの希望が宿った。その日から、彼女の名は「殺希」となった。