ログイン

三嶋 真礼/ヒーローを助ける女子高生バイト

この世界には『異能』という力を持つものが存在する 得てして常軌を逸した能力を持つ彼らは『異能持ち』と呼ばれ、世界のパワーバランスの一端となっていた 己の欲望のみを満たす『異能持ち』は、悪の存在ヴィランとなり世界を混沌に陥れる そんなヴィランにヒーローが立ち向かう。ヴィランを滅することは出来ずとも、日夜ヒーローは戦い続けていた…… 都内に住む女子高校生、三嶋真礼は至って普通の高校生だ 頭脳明晰ではあったが知力を『異能』とする『異能持ち』には足元にも及ばない程度で、ごく普通の一般人だ 『異能』は先天的に持って生まれることが多いとされている 運動能力強化や魔法のような力は、発現が認められることは容易く認識も早い 反対に不可思議な加護や日常生活ではあまり使わないような技能に関する異能は発見しづらく、最悪死ぬまで『異能持ち』だったと分からないケースもあるとか しかし現在は、『異能持ち』を発見するためのテストはいくつかあり、これによって殆どの『異能持ち』を発見することができるようになっている もちろん真礼は全てのテストを受けた 結果は『異能の兆候は認められない』。つまり一般人だということだ 真礼はこの結果に特に思うことはなかった。むしろ安堵したのかもしれない 平和で穏やかな日常を送っていた彼女とってヒーローの活躍は対岸の火事であり、野蛮な戦いに巻き込まれなくてよかったとさえ思っていた 事件の当事者になる前までは 強盗の現場に偶然居合わせて人質の1人になってしまった彼女 相手はヴィランで、一般人では到底太刀打ちできない存在だった ヴィランは何か要求していたが、警察は応じるように見せかけて時間を稼いでいた このままではヒーローを呼ばれてしまうと考えたヴィランは、制限時間を設け間に合わなければ人質を殺すと宣言した しかし、ヒーローの到着はおろか要求を満たすための時間すらほとんどない無茶な制限時間だった 真礼は、どうせ殺されるなら一矢報いてやろうと思った。いや、そんな冷静な思考ではなかったのかもしれない。ただ、命の危険だけは感じていた 彼女は傍に倒れていた警備員のホルスターに手を伸ばす しかしその挙動をヴィランが見逃すことはなかった 数メートル離れているとはいえ、武器を取ろうとした彼女。これを反抗とみなし即座に殺そうと『異能』を奮った 銃声が鳴る 真礼の手には拳銃が握られ、ヴィランは肩を撃たれたのかひるんでいた 警備員のホルスターには銃がついたままだった ヴィランは少し驚いたものの、むしろ『異能持ち』がいたことに逆上し、今度こそ致命的な一撃を彼女に与えようとした 間一髪だった。 疾風のような速さで突入したヒーローは、そのままの勢いでヴィランを蹴飛ばす そして腰を抜かして泣いていた真礼に手を差し伸べた これが、真礼の『異能』が発覚した日。そしてヒーローに憧れるようになった日となったのだ 「おつあーしたー」※お疲れ様でしたの意 彼女、三嶋真礼はバイトを終え速攻で職場を上がった ヒーローの活動の援助をするバイトをしている彼女は、今日も今日とてヒーロー見習いとして後方の援護していた 仕事の能力は申し分無かったが、勤務時間が終われば直ぐに帰ってしまう彼女に1部のヒーローは快く思わなかった 「真礼ちゃん、終わったからってすぐに帰るのはどうかと思うよ」 「や、私やることあるんで」 「ヒーロー見習いなんでしょ?鍛錬とかさやった方がいいんじゃないの、ここにヒーローいるんだしさ」 「私学生なんで、本分は学業なんで」 んじゃしゃっすー(※それでは失礼しますの意)とそそくさと帰ってしまった 「はぁー分かってないなー、あの子」 とため息を着くヒーロー そこに声をかける別のヒーローがいた 「いや、あの子はあの子で頑張ってるよ」 声を掛けられたヒーローはビシッと直立する この道幾年のベテランヒーローで、あの時真礼を助けた人物でもあった 「いや、しかし!バイトであろうと人を救う仕事をしている以上、もっと真摯に取り組むべきであり、そのためには……」 ベテランヒーローは困ったように話を聞いていた。彼も彼で正義に厚いのは間違いないからだ (三嶋さんも、もう少し頼ってくれてもいいのにねぇ) ベテランは心の中でため息をついた 「今回の敵は……だから、単純な物理的な耐性は非常高い。代わりに……に対して脆弱性がある」 深夜、真礼は机の上に向かう 援護という立場を利用し、敵の解析データを見ながらより効果的な対処法を調べる 「……ふう」 ひとしきり対処法を確立させたあと、新たな本を手に取る 現代兵器の解説本や、最新兵器の論文だ おおよそ女子高校生の理解の範疇を超えた内容を、無理やり詰め込み吟味する 理解したか確認するために武器生成を行う 壁に向かって一発 「んー、ジャミング。何か間違ったかな……」 そうやって試行錯誤を繰り返し、夜が明けた 「んー、30分は寝れるかな」 そうやって椅子に座ったまま目を閉じる 彼女なりの鍛錬は知識を吸収することだった 「私もいつか、あなたみたいなヒーローに」