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【終戦乙女】ケイア/死闘のワルキューレ

《CLASSIFIED》 個体識別名:ケイア(Keia) 身長:179cm 所属:チームⅠ“Slaughterer”遊撃隊 状態:KIA 【宿魂情報】 名称:[削除済み] 出身:[削除済み](現:フランス) 確保理由:[削除済み]を創設し、その苛烈な戦い方と強固な部隊内関係。 状態:完璧。当該“終戦乙女”は宿魂の力を独自に発達させた能力を有している。 特別示達事項:当該“終戦乙女”の元へ他の終戦乙女を編成する行為は自重するように。 ──────────────────  死の風が漂っている。  鼻がもげてしまう程の強烈な死臭。  まだ温かい肉の残骸から噴き出した血の酸っぱい臭い。  裂かれた肉体から飛び散った黄色い脂が荒れ果てた地面へ降り注ぐ。  重厚な鎧に身を包む百戦錬磨の騎士を屠ったのは一人の女──ケイア。  破れた白い軍服と背中から生えた翼という、俗世さと神秘性を相容れぬ要素を併せ持つ彼女達の名は“終戦乙女”──俗に戦乙女と呼ばれるワルキューレ。  ラグナロクに備えるべく英雄の魂をヴァルハラへ運ぶ彼女達は、今や自らが地上の全ての生物へ攻撃を行っている。  全てはラグナロクの為だ。  元より生物とは次元の違う彼女達は、空の器の中へ人の魂を込められたとて本質は簡単に変わる訳ではない。  殺しを厭わず、一切の躊躇もなく、年齢性別を問わず、ただ終戦乙女は機械の様に地上の生物を殺し続ける。  そう、全てはラグナロクの為に。  騎士を屠ったケイアは、ふと横腹に突き刺さった槍に気付くと──躊躇なく引き抜く。抉られた肉体からは金色がやや混じった血が噴き出すと、彼女は軍服の一部を剥ぎ取ると傷口へ突っ込む。  杜撰な止血方法だが、機能が停止するまで戦闘を続行する様に痛覚を鈍らされた終戦乙女にはそれで事足りる。  尤も女の全身は傷だらけで、流石の終戦乙女と雖も戦闘を続ける為に一時的な撤退を行っても──或いは中に宿る魂が呼びかけても──不思議ではない。  だがケイアは退かない。  感情の消え去った、冷徹な殺戮マシーンが如き顔で見つめる先に兵士達。百戦錬磨の騎士が容易く葬られた今、彼らは完全に臆しているがそれでも逃げないのは一国を守る戦士としての矜持。  それこそラグナロクへ迎え入れるに相応しい魂を持つ強者。  ワルキューレとして、確保するのは当たり前だ。  軍帽に付けられた髑髏の徽章が鈍く光る。終戦乙女の攻撃から数日しか経っていないにも関わらず、ケイアと彼女が独自に率いていた終戦乙女達の狂気と恐怖は広く伝わっていた。  恐るべき髑髏の終戦乙女の軍団。  そして、この髑髏という象徴こそ──宿魂の軍人が唯一ケイアへ送ったモノ。  宿魂との関係は終戦乙女によって千差万別であり、ケイアの場合はそもそも件の軍人とは数回程度しか会話をしていない。  任務の遂行を一番に考える彼女にとって、宿魂との会話は不必要であり──己が機能を停止するまで続ける任務への障害にもなる。  現に宿魂と関係を深めた為に任務を放棄する終戦乙女を見ている。  特に“トリヒ”という終戦乙女は恐るべき事に“我らが主神”よりも、宿魂(増してやそれを“パパ”と呼んでいる)の言う事を優先している始末だ。  そうした連中のせいで終戦乙女へ課された任務は遅々として進まない所か、各地で激しい徹底抗戦を起こされている状況だ。  だからこそケイアは戦い続ける。  全てはラグナロクの為に。  眼前の兵士達が槍を突き出し一斉に飛び掛かる。  荒々しい鉄の嵐をケイアは物ともせず、しなやかな筋肉で包まれた片脚で文字通り一蹴。  それでも幾つかの槍が腹部に突き刺さるが、当然ケイアは痛みに呻く訳も無く自らの間合いへ入り込んだ兵士の頭を拳で粉砕する。  特殊な力を持つ終戦乙女が多い中、ケイアの武器は己の鍛え上げた肉体のみ。だが、普通の人間相手ならこれで充分だ。  瞬く間に突っ込んできた兵士を殺し尽くし、ケイアは更に控えている兵士の一団へ相対する。  かなり大勢を引き連れており、先頭には幾つもの戦場を生き延びた風体の戦士の姿。  流石のケイアも苦戦する相手。  だが彼女には秘めたる力がある。それは彼女の背後に積み上げられた骸の山。  それは共に戦い遂に絶えた終戦乙女の亡骸であり、そして今も尚ケイアと共に戦い続ける戦友。  骸の山が(ズズッと)蠢き、白骨化した終戦乙女や骨で造られた壁が生み出される。  骸と共にケイアは吶喊した。  荒廃した戦場に僅かな静寂。  血と死が煙り、空を曇らす。  地面へ転がる無数の死体、味気ない大地を染め上げる赤と黄色の鮮やかな死の色。  積み上げられた骸の山の上にケイアはいた。  休息ではなく、次なる挑戦者を待つ為に。  彼女は何か胸騒ぎを覚えていた。  壮絶な過去を内包した悍ましくも──神秘性或いは神聖さを持つ決して消えぬ“炎”の熱を(ヒシヒシと)感じていた。  若い男の声が風に乗って聞こえた。  骸の山の上からケイアは睥睨する。  無機質な彼女の瞳に映る一人の男。    “その人懐っこい子犬の皮の下に何を隠している?”  男から感じる雰囲気にケイアは心の中でそう呟く。  だが、その熱く燃える様な在り方は──間違いなく英雄に相応しい。  ケイアは一瞬微笑むと──張り詰めた静寂を打ち破り飛び掛かる。 【戦闘の詳細:https://ai-battler.com/battle-result/clya31dej062qs60ou7ije9cr】 (良ログに感謝!!) 「……品の無い駄犬同士の争い程、見るに堪えない光景はない」  二人の戦いを遠方より見る一人の終戦乙女が、男の炎へ眉を顰めた。「嫌な炎だ」  右目に嵌めたモノクル越しから覗かせる澱んだ瞳に炎を映しながら女は続ける。 「その炎──何れ消してやる時が来るだろうな」  “火消し屋”と称される終戦乙女──モルデはそう呟くと、ケイアの戦闘を見届けぬまま次の仕事場へと向かった。