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惑星解放戦線特級兵//有宮 リリィ

私がファンタジアに応募した「籠の鳥」の世界観で描いた外伝というか未来のお話です。 2000年に開いた異世界との6つの扉により地球環境が一変してエーテルと呼ばれる架空粒子が溢れたことで魔獣災害により滅びかけているのが「籠の鳥」ですが、その700年後の未来、西暦が終わり王暦へと移った時代のキャラクターです。 テクノロジーは今より遥かに進んでいますが、王政の復活によりディストピア的な世界になりつつある地球でリリィは産まれました。 妖精の血を引く彼女はエーテル親和能力が高く、グレムリンと呼ばれる機械妖精を使わなくてもマホウが使える子でしたが、純粋な地球人じゃない彼女は周囲から疎まれ、異世界人達からも裏切り者として狙わています。 それでも地球を愛した彼女は祖父母から聞く西暦時代の地球を取り戻すために、人類の一大反攻作戦【惑星奪還計画】に参加します。 過酷な訓練を超えて特級兵として能力を身につけた彼女は一万人の仲間と共に詩羽達、FMRIが存在する過去に飛びました。 しかし、当初技術格差によりある程度優位があると思われてましたが、それは早々に崩れました。安全性や量産性から均一化された規格の兵装では当時の神や魔王、魔獣にはほとんどはがたちませんでした。 とある理由からFMRIを敵視してることもあり、当時の地球人に助けを求めを得ることは出来ませんでした。 それでも彼等は総力を結集し多くの犠牲を出しながらも、37体の神、544体の魔王を討滅、もしくは封印しました。 そして神狩りにも慣れてきた頃、彼等は優先討滅対象の亜神と出会いました。 神より上位の存在とはいえ、いくつもの禁式や特級封印を集めた解放戦線メンバーは勝てると思っていました。ーーーーしかし、神としての限界がない亜神は圧倒的でした。 人と同じように学び成長する亜神は驕ることなく、決して理性的でもなく、自らの存在理由の為に彼等と戦いました。 結局、羽を一枚堕とすことは出来たものの、解放戦線メンバーは壊滅状態に陥り、撤退しました。 リリィは最後まで殿を務め、なんとか何十名かの仲間を逃すことに成功しました。 ーーーーーーーーーーーーーー 泣きながら懸命に戦う亜神の拳が迫る中、一緒に戦ってくれた相棒へリリィは微笑み、 「今までありがとね、なんだかんだ、貴方と一緒に過ごせて楽しかったよ」 「俺もだ。正直めんどくせえし、だるいことばっかりだったが、まぁ悪くは無い人生だった」 あらゆるものを分解する拳が核攻撃にすら耐える障壁を軽々と突き破り迫ってくる。 数百人の兵士の命を生贄にしてかけた禁呪による鎖も既にほとんど消えており、亜神の動きも元に戻ってきた。 頼みの原子分解銃も銃身が歪んでいて牽制すら難しい。自動修復機能もおそらく間に合わないだろう。 あと、出来ることと言えば炉心を加速させて自爆させることぐらいだ。 それでもあの少女(バケモノ)にはかすり傷くらいしか与えられないだろうけど。 セーフティを外しながら、同じことを考えているだろう相棒へ目を向けると、彼はその鳶色の瞳で私をじっと見ていた。 「…なによ。さっさとロック解除しないと…時間、ないわよ」 見なくてもわかる。 金色の髪に隠れた私の出来のいい耳が<亜神>ルチアのエーテルの高まりを感じていた。 ……殺す気満々のくせに謝りながら泣いているあの少女はほんとイカれてる。耳障りだ。 振り切るようにチョーカーを緩めて首を振る。 「なぁ」 「ん?」 「悪いな」 は?と彼に顔を向けた瞬間、淡い青の粒子が私の身体を包んでいた。転移の際に発生するクラン光だ。 「な、んで」 なんで高圧縮エーテルが残ってるのか、なんでそれが私に使われてるのか、そもそも転移術は1人で発動できるわけがないのになんでーーーー、様々な何故が脳内を駆け巡る。 「男だからな」 そう言って彼はさっぱりした顔で笑うと、亜神へと向き合った。 亜神は常に流していた涙を止めて、一瞬呆けた後に儚く笑うと頷き拳を振り上げた。 なんで。 やめて。 身体の端から解けていく感覚に抗いながら彼に手を伸ばし、何か言おうと喉を震わせるが声にならなかった。 薄れゆく視界で最後に見えたのは、彼が持つ銃を中心に広がる光だった。 ーーーーーーーーーーーーーーー そしてリリィは相棒の男の子に逃されました。 転移した先はアメリカのノースカロライナ州でした。 彼女は荒廃した灼熱の砂漠で慟哭します。 滴り落ちる金色の涙は乾いた砂に染み込み、嗚咽が風を呼びます。 何時間泣き続けたでしょうか。 銃を手に立ち上がったリリィの髪は蒼く染まり、瞳には煉獄の炎が灯っていました。 彼女は歩き出します。 未来の為じゃない。 自らの復讐の為に。