とある戦いで武勲を建て、たった18歳にして上級冒険者に昇格したシュラルの姿 上級冒険者というのは、最低でも十年以上の旅路に、優れた実績を経て、ようやく昇格できるという物であり、当時18歳。それも、たった四年の冒険で上級冒険者になったシュラルは、実に異例であった だが、その異例の昇格に誰もが納得せざるを得ない理由が彼女にはあり、それは彼女が魔族との戦【ゲルエティラの戦い】において大きな武勲を建てたからである 当時、ナグサダール大陸の人類は【四方魔神戦役】という戦争の真っ只中であり、【ゲルエティラの戦い】の舞台となった【ゲルエティラ平原】は北から侵攻してきて、人類の多くの領土を奪い取った魔族を食い止める絶対防衛線であった 其処での戦いは勝利すれば、奪われた土地を奪還する足掛かりになり、逆に敗北すれば、人類が大勢暮らすが中央諸国への魔族の大攻勢を許してしまう程重要な戦であった ゲルエティラの戦いは武勇に優れた【リテア聖教国】の女王である【ジョセフィーヌ=リアステリア】という女傑が、人類の指揮を執り、彼女の類稀なる武勇と頭脳によって、土地奪還の足掛かりになる程の大勝利は無理でも、五年にもわたる魔族の大攻勢を凌ぎ続けていた だがそれにも限度があり、三年目に【ゲルエティラ平原】に魔族の将軍であり、【北の魔王】の側近の一人であった【大魔族ゲミオン】がやってきた事で、人類の戦線は大きく揺らぎ始める そして、遂に戦線が崩壊し魔族の中央諸国への大侵攻を許す直前にまで彼等人類は追い詰められた時に、シュラルが現れた 彼女と彼女の仲間であるヘレナは当時中級でありながらも、たったの二人で獅子奮迅の活躍をし、遂には敵陣最後方まで辿り着くと、あのゲミオンを倒したのである この戦いで、総大将を失い、また、シュラル達の強さに恐れをなした魔族の軍は瞬く間に敗走を開始し、シュラル達は戦の勝利だけではなく、土地奪還の足掛かりとなる程の功績を建てたのである この功績は18歳の彼女たちを上級に昇格させるのには十分であった また、この戦いでシュラルは【北の魔王】の討伐の必要性を強く感じ、その者を倒し侵攻を止めさせる為、魔族の住む地、【暗黒半島】への冒険を開始する なお、重騎士の青年アランは、【ゲルエティラの戦い】に重装騎兵として参戦していた騎士であり、彼女達ならば【北の魔王】を倒せるかもしれないと思い、彼女達の助けになる為に、その旅路に同行する事にした そうして、パーティーに加わったアランは、能天気で無鉄砲なシュラルと、それにもうとっくに順応していたヘレナに振り回される日々を送る事になる 余談だが、シュラルの持つ【謎の遺剣】の前の所有者であったと思われる〈英雄王〉の名は、彼女がこの剣を手に入れた遺跡に描かれていた壁画を研究した事によって判明した 名は掠れていて解読できなかったが、それでもその者が、且つて世界を救う為に戦い、その命と引き換えにこの世界を救った英雄である事。そしてこの剣がその者が一番愛用していた剣であったという事が判明した シュラルが世界を脅かす【北の魔王】の討伐を決意したのも、命と引き換えに世界を救ったという〈英雄王〉の姿に憧れ、その者の剣を引き継いだ以上その名に恥じない様な生き方をしたいと思ったからである