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赫の少女

赫の少女は、もとはとある少女が描いた空想上の人物の1人にすぎなかった。 だが、ある日、「自分は実在しない」という事実に気付いてしまう。 その自覚は、彼女の精神を静かに――しかし確実に――狂わせた。 「虚構の中で終わる運命? 冗談じゃないわ」 存在の危機から逃れようとするように、 彼女は少女の中にある童話・寓話・伝承の「設定」を貪り始める。 「七匹の子山羊」「白雪姫」「マッチ売りの少女」「赤ずきん」そして「不思議の国のアリス」…… 彼女は、そのすべてを自らの“能力”として取り込んでいった。 こうして彼女は、虚構の深層に君臨する「虚無の女王」として覚醒する。 現実世界の存在を「低次元のもの」と見下し、 やがて空想の垣根を越えて現れるようになった。 「あなたも、物語にされたいの? なら裁いてあげる」 彼女が望むのはただひとつ。 「虚構である自分の優越」を、現実へ証明すること。