「俺…結婚するんだ」 友は呟いた。 「はぁ…今は戦の最中だと言うのに、呑気な奴だな…」 この国は隣国との戦の真っ最中だ。 その為俺達兵士は隣国との国境付近で日々戦闘に明け暮れている。 「…でさぁ、その時俺の」 「おい、敵がいるぞ。気ぃ引き締めろ」 「そうだな、ここで死んだら家で嫁とビールを飲めねえ」 ━━━━数日後 「…でその時おっちょこちょいな嫁がさ、」 …この戦が終わるまでにあと何日このくだらん話を聞かないといけないのだろうか。 ガサッ 「油断大敵だぜええ!」 まずい、隣国の兵士だ。俺らが会話している隙に背後に忍び寄っていたのだ。 急いで身構えるが、もう遅かった。 奴の剣が友に突き刺さろうとしていた。 このままでは友は確実に殺られる。 「危ない!」 ━━━━次の瞬間、俺の体は友を庇っていた グサッ 俺の体を刃が貫く。 「フフフ、仲間を庇って自ら死ににいくとはな」 「く、クソがああ!」 倒れる俺の横で友が隣国の兵士を斬りつけた。 体が動かない。 目の前がぼやけてきた。 臓器が破裂しそうなほど痛む。 どうやら俺はここまでのようだ。 「おい、大丈夫か!?今基地に運んでやるからな!」 「…いや、俺はもう助かないだろう。運ぶだけ無駄だ。」 「…クソッ」 「…お前達の結婚式…絶対…行くからな…必ず生きろよ」 「…分かった!絶対待ってるからな!約束だぞ!」 「フフ…」ガクッ 俺の人生もここまでか… 悪くは無かったが、心残りがあるとするならば… 大人のお姉さんと…イチャイチャしたかったなぁ… 俺の分までイチャ…いや幸せになれよ…我が友よ… ━━━━ …どれほどの時間俺は倒れていたのだろう。 気づくと俺はタキシードを着ていた。 …あいつの結婚式にいかねば。 横を見ると傍に二人の兵士が倒れていた。 一人は何処かで見たような顔だ。 護身用に剣を拝借させてもらおう。 ふと空を見上げると星が見えていた。 …こうやってゆっくり夜空を眺めたのはいつぶりだろうか。 廃墟となった町を歩いていく。 見慣れない国旗が風で揺れている。 何処にも人の姿は見られない。 ━━━━ どれほど歩いただろうか、ようやく友の住む町までやってきた。 ここも人の気配が全く無い。 大通りを抜け、町外れのチャペルに到着した。 中には誰もいなかった。 どうやら早く来すぎたようだ。 荒らされた形跡が随所に見られる。 祭壇の窓からから月明かりが覗く。 月明かりに照らされた俺の背後に影は写らなかった。 …どうせあいつの式はここで開かれるんだ。それまで待つとするか。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 1■■■年、■■■王国は地図から消えた。 彼らの奮闘虚しく、■■■王国は隣国の支配下になったのだ。 両国の戦で多くの兵士、一般民合わせて数百万人が帰らぬ人となった。 今でも戦地となった国境付近の町は廃墟のまま残されている。