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【最初で最後の無の一振り】虚雷命

ある日、突如として現れた黒い泥のようなものは街を包み込み破壊と狂騒を振りまいた。その名は虚影。現代に蔓延る癌のようなものである。彼女の街の人達は皆剣を取り、戦い続ける。最後の一刀が折れるまで。 日々人は減っていく。刀も減っていく。人々は虚影に対抗するため虚影の力を取り込み、虚影を使って刀を打つ。しかし、状況は悪くなる一方だった。 ついに最後の人と最後の一刀になった。彼女は崩壊した街の中でただ独り刀を振るう。そして最後の一振りが全ての虚影を切り裂き街もろとも虚無に消えた。彼女は近づきすぎた。虚影などという理解の範疇を超えた現象に。 彼女は故郷を滅ぼした虚の力を手に入れた。もっとも故郷の平穏は手に入らない。 虚の力は彼女に絶大な力を与えた。しかしその代償として彼女の記憶は虚無には消え、未来は虚無に向かっている。刀を抜いたその時にのみ彼女の記憶は赤く色づく。