責任感は、強い方だと思う。 あるいはそれは、より能動的な "使命感"だったかも知れない。 将来は大企業を背負う立場になるのだ、 人を率いる役目は全て、練習と思って立候補した。 そんな私は、家柄と振る舞いの影響もあって 様々な人に頼られるようになった。 プレッシャーと、充足感。 歩む甲斐のある道だった。 異世界転生、という現象は実在していたらしい。 交通事故に遇った私は、 気付けば見知らぬ国の 王の娘として生を受けていた。 ……築いたもの全て、目の前から消えていた。 最初は戸惑ったし、辛かった。 しかし年月が慰めとなり、 次第に運命を受け入れられるようになった。 やっと精神的に折り合いを付けられた頃、 今度は女神の信託が降りた。 どうやら私は今代の勇者らしい。 当然困惑はした。 しかし民を守るという使命に身を投じられる事実は、 かつて失った誇りを再び手にできる喜びをもたらした。 私は胸を張って、 勇者を名乗ることに決めた。 ……ただ、女神様の言葉だけが、胸につっかえる。 「優しき貴女達には、酷な道となることでしょう それでも私は、真摯な貴女達の選択を尊重します 願わくば貴女の行く先に、幸運があらんことを」 貴女達 その言葉は、「彼」を想起させた。 私を囲う人々を遠巻きに眺める一人の男子。 いつも一人で空を見上げ、呆けていた…… 卑屈で捻ねくれ者で、その癖 不器用で誠実なお人好し。 私と共に事故に巻き込まれたハズの 「優しい」彼のことを。