ソステヌート・プレストは1592年、XXではそこそこ名の知れた屋敷の一室で生まれた。 深緑の髪に、人形の様な目をした可愛らしい彼女は、両親の愛を一身に受け成長した。 彼女は絵本が好きで、母親が読んでくれた、物語出てきた一人の王子様に憧れ、 口癖の様に「王子様みたいな、幸せを運ぶ人になりたい!」と言い、両親だけでなく、館の従者達にも温かい空気感を与えていた。 そんなソステヌートには生まれつき、『音の波』を観ることが出来た。 『音の波』と言うのは、振動であるがそうでは無い。 何らかの思いが秘められた曲は、まるで光のスペクトルの様に赤や紫に見えるのである。 しかし、当然ながらこの『音の波』は少女にしか見ることが出来ず、 普通の人間にはない特異なことを口走るその不気味さに、 周囲からは「魔女」や「頭のおかしい子」と言われ蔑まれる対象となり、 実の両親からも「悪魔に取り憑かれた子」として、誰一人、ソステヌートの素晴らしい才能のことを好意的に受け止める者など居なかった。 次第にソステヌートは、かつての明るさを無くしていく一方、音の波を操れる程の力を手に入れた。 全ては、昔母に読んでもらったとある一冊の本に描かれた王子様の様に幸せを運ぶ人になる為に...