かつて、ある研究所があった。超能力を研究しようなどとありふれたものが。 そして、その研究方法も…人体実験などというありふれたものだった。 穂村は研究所で生まれ、炎を操って生きてきた。その際に能力を限界まで引き出すため、絶食状態に追い込まれたり、擬似的なサバイバル空間で戦わされたりすることなど日常茶飯事で、穂村は当たり前なことだと受け入れていた。 ある日、穂村はお役御免となった。研究所は解体され、穂村は世界を知った。そして、この世界において穂村は異物だと教えられた。 穂村は、自分の世界は研究所の中にあったのだと悟った。そこは疎ましいところであり、壊されて然るべきとも思っていたが…穂村はたしかに、そこで生きるために、人生を歩んでいたから。 でも穂村は、何かする気にもなれなかった。力を示す…世界を変える…。違う。 穂村進は旅人だ。 今はとても気楽である。 温泉大好き。