ログイン

【天地返しの女天邪鬼】 泥鬼(デイキ)

露悪者であり簒奪者であり虚飾者 いつだって満たされない、満ち足りた事など有りはしない 奪ったところで自分のものだなんて言えないのだから いつか滅びる貧弱なる大悪 ############################ 泥鬼自身の本来の戦闘能力といえる部分は「鬼種の格闘術」と「縊る」ぐらいのものである。 鬼種として当たり前の力も、体格もない。いくら努力しても力だけは増すことはなかった。周りを助ける知識知恵はあっても、本当に欲しかった当たり前の肉体だけはない。 貧弱にして厭世家気取りの皮肉屋。それが泥鬼であった。 ひん曲がった性格の泥鬼にも友達、というか構ってくれる奴がいた。(あっちが勝手に友達面してるだけとは泥鬼談) それがよりにもよって泥鬼の羨ましく思うキラキラした奴で…… あいつは郷の守護者をやるほど強くて、体躯も立派で、努力を惜しまなくて、皮肉屋な私にも優しくて、私を守ってくれて…… 長い時間で心に澱が降り積もり、力がない自分も嫉妬している自分も、全部全部嫌になって……郷を出て行った。 旅に出て消えてしまいたくて当てもなく歩き続けて、見つけた。見つけてしまった。 其は願望器。願いをかなえる泉の精。願った。願ってしまった。 自分もキラキラしたいと。彼女に、壮鬼に胸を張れる存在になりたいよ。 頭の中で水底から響くような声がする 『……願いはかなえられた』 『……キラキラしたいならキラキラを奪えばよろしい』 『……彼女に負けたくないなら彼女を自分以下に引き摺り下ろせばよろしい』 『……せいぜい胸を張って生きていくがよろしい』 願いは捻じれて叶えられ、気が付けば身体から名前を表すように泥が溢れ出ていた。 相手をとことん貶める力を得た泥鬼は、もう元の彼女とは言えなかった。 性格は破滅的に捻じ曲げられ力を振るう事に躊躇はない。 飢えるようにひたすらにキラキラしたものを求め、彷徨い、奪い、器の容量は変わってないせいで奪ったものもすぐに泥として溢れる。 増えては溢れ、溢れては零れ。記憶すら溢れ零れもう曖昧な中。 それでも唯一はっきり覚えてる。いつか、いつか見た一番キラキラしていた彼女を求めて 最期はキラキラしたものの前で……