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【天地返しの女天邪鬼】 泥鬼(デイキ)

露悪者であり簒奪者であり虚飾者 いつだって満たされない、満ち足りた事など有りはしない 奪ったところで自分のものだなんて言えないのだから いつか滅びる貧弱なる大悪 ############################ 泥鬼自身の本来の能力といえる部分は「鬼種の格闘術」と「縊る」ぐらいのものである 貧弱にして厭世家気取りの皮肉屋。それが泥鬼であった。 ############################ ひん曲がった性格の私にも友達、というか構ってくれる奴がいた。 それがよりにもよって私の羨ましく思うキラキラした奴で…… アイツに気持ちがバレるのも、力がない自分も、全部全部嫌になって郷を出た。 よりによってあんな手紙なんて残してしまって……今すぐ燃やしに戻りたいが戻るわけにもいかず。 旅に出て消えてしまいたくて当てもなく歩き続けた。 もう何日経ったかわからないなかで、見つけた。見つけてしまった。 森の中にぽっかり空いた広場。下草が青々と残り突然湧き出したことが分かる清らかな泉。 そこから現れる清らかな女性を模した水の精。其は願望器。願いを持つ者の前に現れる、願いを叶える泉の精。 あぁ……だが私は知っている。知っているぞ泉の精め。お前の正体を、お前に関わった者の果てを。 だけど……なぜだ。私は伝えたくてたまらない。狂おしい程のこの気持ち。 アイツにだって手紙っていう形じゃなきゃ残せなかった私の弱さ。 それを、伝えたくて伝えたくてたまらない。 抱え込まなきゃいけないのに。どうにかするにしても私自身がどうにかしないといけないのに。こんなの絶対にいけないのに。 こんな奴に負けちゃいけないのに。伝えてはいけないのに。 ………………あぁ……泉の精さま。願いを叶えてください。 自分もキラキラしたいのです。アイツに、壮鬼に胸を張れる存在になりたいよ。 ############################ ……願いはかなえられた。 ……キラキラしたいならキラキラを奪えばよろしい。 ……彼女に負けたくないなら彼女を自分以下に引き摺り下ろせばよろしい。 ……せいぜい胸を張って生きていくがよろしい。 願いは捻じれて叶えられ、気が付けば身体から名前を表すように泥が溢れ出ていた。 相手をとことん貶める力を得た泥鬼は、元の彼女とは言えなかった。 性格は暴力的に捻じ曲げられ力を振るう事に躊躇はない。 飢えるようにひたすらにキラキラしたものを求め、彷徨い、奪い、魂の器の容量は変わってないせいで奪ったものもすぐに泥として溢れる。 増えては溢れ、溢れては零れ。記憶すら溢れ零れもう曖昧な中。 それでも唯一はっきり覚えてる。いつか、いつか見た一番キラキラしていた彼女を求めて。 穢れ泥だらけになったとしても、願わくば最期はキラキラしたモノの前で……