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【独壇場の魔豹将軍】パルロット

10代中盤〜後半 身長171㎝ 終戦はおろか、国が滅んだ事すらも知らされずに、秘匿された地下牢の看守の勤めを真面目にこなす少女。彼女の独特の口調には妙な中毒性があり、なりふり構わないパワフルなスタイルと相まってファンが多い。 同僚のナベロスと仲が良く、非公式ではあるが双方共に囚人達の間でファンクラブがある。 ───────────────── 【被験体データ】 No. 【S-57】 コードネーム:オセ 出身国不明。【斜陽の国】より入手。四肢に枷をされており、奴隷として働かされていた様子。 ───────────────── 汚れた硬貨数枚と、僅かなパンの切れ端。それが私に初めて付いた価値だった。 酒を呑んで暴力を振るう退役軍人の父。過去の栄光なんて私には関係のない話だった。ただただ酒と博打に溺れて暴れ回った後、泥のように眠りこける存在だった。散乱した全てを片付ける私の気持ちなんて知りもせずに。 私を隠れ蓑に利用する母。派手な化粧と金切り声。自分に傷が付けば商売にならないからと私を父に差し出し、毎晩街へと消えていった。そうして何度目かの夜に消えたまま、戻って来なかった。 「家族はかけがえのない大切な存在」私が抱えている現実を執拗に踏み躙る耳障りな言葉。 皆が思い思いに描く家族の一つ一つが突き刺さった。 散々使い尽くされたようなありふれた地獄も、どこに行ってもバカの一つ覚えのように唱えられる綺麗事も、どれも本当に何一つ理解できず嫌いだった。 ───────────────── 【研究報告書】 X月X日 激戦地となった【斜陽の国】より入手。こちらの問いかけに関してほぼ無反応。非常に痩せ細っており、鎖を引っ張るも無抵抗だった。兵士が出した携帯食を凝視。食べるようジェスチャーで伝えると全量摂取したとの事。獣人である為、生体兵器及び【ギフテッド計画】の被験体とする。 X月X日 皿の上に盛られた食事に喫驚。全く食べる様子なく凝視。食べるよう言葉で伝えると手掴みで貪った。僅かな単語で有れば指示を理解する様子。また本人も単語であるが簡単な言葉であれば発語あり。まだおぼつかないが、カトラリー一式の使い方は覚えた様子。 X月X日 栄養状態改善した為【ギフテッド】投与。発熱が認められたので個室で安静にさせておく。また投与した際、医師が本被験体に引っ掻かれて軽傷。従順だったので油断していたが獣人である為、本被験体にそのつもりがなくても本能的に身体が動く事がある。警戒を怠らないよう周知。 X月X日 本日解熱。辿々しいが、医師に引っ掻いたことを謝りたい旨聴取。一緒に医務室に出向き先日の事を謝りに行く。医師に撫でられ喉をを鳴らす。満足したようで足取り軽い。体力テストも非常に高水準だが特異な能力は発動せず。要観察。 X月X日 運動場で【S-24】と殴り合いの喧嘩に発展。事情聴取する。他の被験体である双子兄妹の妹の方に「同じ獣人同士である【S-24】とどちらが強いかと聞かれた。【S-24】は自分達の方が強いと笑って、自分の事を馬鹿にしていた」と言われ、カッとなったとの事。真相を知り、慌てて【S-24】に謝罪する様子あり。【S-24】も菓子欲しさに本被験体に殴りかかった旨を申し訳なさそうに話し、和解した様子。 X月X日 本被験体誕生日。簡易的だが誕生会を開く。【S-24】が作った厚紙製の王冠を被り、周囲に自慢して回っている。「王になった気分」と話す。誕生会終了後も王冠を被り、自分が王である旨を話して周囲を歩き回る。今までの辿々しい口調から一変、威風堂々とした語り口調。また短時間であったが一部の被験体が本被験体を王と崇め、召使いのように振る舞う。注視していく。 X月X日 戦闘員との戦闘訓練開始。獣人特有の俊敏な動きで翻弄するが、言ってしまえばそれだけであった。戦闘員としてはそれなりに優秀であるが、【ギフテッド】としては失敗作かのように思われた。しかし何処からともなく紙製の王冠を取り出し装着してからは状況が一変。突然戦闘員が全員投降。本被験体の独壇場であった。紙製の王冠を【支配者の王冠】と呼び、本被験体が被ると妙な輝きを放つ。世界を制すのは自身である事を声高らかに宣言。 制御不可能な狂気的な妄想が飛び交っており、支離滅裂な発言を繰り返した。 X月X日 【支配者の王冠】を装着時、制御不能な狂気を振り撒く。 【S-57】のコード割り当てる。 強力ではあるが、制御不能かつ時間制限もあるので戦場にはやや不向き。本人自体は至って真面目な性格な為、地下牢の看守として働かせる。【S-24】と協力し合っている。また限定的ではあるが支配力がある為、向いている様子。 ───────────────── 価値のある存在になりたかった。たかが硬貨数枚とパンの切れ端で親に売り飛ばされる存在じゃなくて、誰もが敬い、大切にされる存在に。 初めて祝われた誕生日。あの日、私はもう一度生まれたのかもしれない。初めて食べたフワフワした甘いものにも感動したが、何より初めて出来た友人が被せてくれた王冠が何よりも宝物になった。世界に生きていていいと、価値ある存在だと初めて言ってもらえたようだった。誕生日が終わっても、その日はずっと被っていたものだから笑われてしまったが、それすら暖かい思い出であり、今でも被れば、自分が価値ある存在になれたあの時の気持ちを思い出して幸せだ。 あの日、知らない女の子に呼び止めらた時に私の運命とか、未来とか、そういう大きな物が動いたのかもしれない。艶やかな黒髪とキラキラした菫色の眼。皆が宝物にしたがるような、とっても可愛い子だった。後程、かなり悪辣な子である事が発覚したけれども。未だに腹が立つが、あの子に騙されていなければ、私は親友に会えなかった。だから許そうとは思う。騙された事はめちゃくちゃ腹が立つが……思い出すと滅茶苦茶腹が立ちにゃすな……