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神父ヴィクター&シスター・アリア

「こいつかい?聖装っていって、聖別っていう特別な儀式を済ました武器がそう呼ばれるんだけど、この剣はその中でも特別製、カミサマが認めた剣なんだ。たったそれだけであらゆるものが斬れるようになるんだから、有難いことさ。」 「神父様」 「おっと、「たったそれだけで」は内緒で頼むよ」 「アリアちゃんの聖装は聖鞄アンブロシア。大層な名がついちゃいるが、ここをこうすれば簡単に…」 「神父様、逆です」 「悪かった。複雑な機械は若いモンに任せるよ。重要なのは、機械仕掛けでも聖なる炎で敵を焼き尽くせるって事さ」 古い街の小さな教会。 木椅子に座る信徒たちの前で、ヴィクターは気怠そうに聖書を閉じた。 「さて……説教ってやつは、大体難しく考えすぎなんだ」 信徒たちが顔を上げる。 ヴィクターは壇上に肘をつきながら言った。 「罪とか罰とか、神様とか。複雑に言うけどさ」 「結局は、自分がどう思うかってことなんだよ」 ざわ、と教会に小さな空気が流れる。 その後ろの扉のそばに、修道服の女が立っていた。 シスター・アリア。 伏し目がちなまま、両手で大きな鞄を持っている。 ヴィクターはちらりと視線を向けた。 アリアが小さく口を開く。 「神父様」 「ん?」 「来ています」 教会の外から、何かを引きずるような音がした。 ガン。 ガン。 ガン。 信徒の一人が振り向く。 扉が、ゆっくりと開いた。 そこに立っていたのは、人の形をした何かだった。 肌は灰色に変色し、目は濁り、口から黒い液を垂らしている。 信徒の誰かが叫んだ。 「悪魔憑きだ!」 その瞬間、教会が騒然となる。 ヴィクターは頭を掻いた。 「……説教の途中なんだけどなぁ」 化け物が一歩踏み出す。 床板がきしむ。 アリアが言う。 「神父様、あの」 ヴィクターは手をひらひら振った。 「分かった分かった、真面目にやるよ」 彼はカソックの内側から、二丁の拳銃を抜いた。 乾いた銃声が教会に響く。 パン。パン。 弾丸が化け物の肩と膝を撃ち抜く。 体勢が崩れる。 ヴィクターは軽く肩を回した。 「ほら、見たろ」 「罪ってのは、こういうのを言うんだ」 信徒たちがぽかんとする。 その間に、アリアが前へ出た。 彼女の鞄が静かに変形する。 金属の音。 砲身が伸びる。 アンブロシア・バルカン。 次の瞬間、轟音が教会の外へと広がった。 機関銃の連射。 外にいた悪魔憑きたちが、次々と倒れていく。 硝煙の匂いが漂う。 やがて銃声が止んだ。 アリアは再び鞄を閉じる。 静寂。 ヴィクターは拳銃をしまいながら言った。 「……で、どこまで話したっけ」 信徒の誰かが震え声で言う。 「つ、罪の話です」 ヴィクターは笑った。 「そうそう」 「騒ぎを起こすのも罪だが」 教会の外の惨状をちらりと見て言う。 「説教の途中で邪魔するのは、重罪だ」 アリアが静かに言った。 「神父様」 「ん?」 「まだ三体残っています」 ヴィクターはため息をついた。 「……あーあ」 カソックを整える。 そして扉へ向かいながら言った。 「じゃあ説教の続きは、全部終わってからだ」 アリアは頷いた。 「はい、神父様」