ログイン

白銀のセツ

繁華街の光も消える深夜、月明かりの下…… 1人の女性が歩いていた。 「……」  季節外れな厚手のジャケットとデニムパンツ、その女性は静かに駅前通りを練り歩く…… 街角の降りたシャッターに女性の影が写り…… 「クオォォォッ……」 その後方、巨大な怪物の影がシャッターに伸びた! 「来たわね」 うなり声を聞いた女性が振り向くと、自身の何倍もの大きさの怪物を見上げる! 頭部が無い怪物は巨大な胴体の口を開き、叫ぶ! 「クゥゥゥオォッ!」 怪物は四つん這いの体勢でジャンプ! 空中で長い長い右腕を振りかぶる! 「星よ……!」 女性は動じず、輝く宝石を空へかざす……! そこに流れ星が落ちて来た! 女性は流れ星と一体化し、光り輝く! 「オオォォッ!」 怪物がツメをその光に振り下ろした! 破壊音が静まり返った通りに響く! 「クゥゥッ?」 怪物の右腕の下……あるのは割れた道路だけだった。 もし女性がこれを受けていたら……潰れたトマトのようになっていただろう。 「ワタシはここよ」  女性の声を聞き、怪物は街灯を見上げる。そこには……月の逆光でよく見えないが、女性が立っていた。ジャケットやデニムパンツでは無く、体のラインを曝け出す姿をしている。だが女性のそのシルエットが変化する。上半身には鎧甲冑、下半身には末広がりのロングスカートが瞬時に現れた。戦士と女性……2つを強調するその姿は輪郭がぼんやりと光っている。そして逆光の中で……胸元の宝石が白く輝いていた。 女戦士は鎧……籠手を身に着けた右手を怪物に向け…… 「ふっ!」 手のひらから眩い閃光が広がる! 「クオォォゥッ!?」 目の無い怪物が、目が眩んだかのように怯んだ! 「とぅ!」  女戦士は街灯からジャンプし空中回転……まるでトランポリンで飛ぶ体操選手のような滞空時間を経て、怪物の後方に着地。 左腕を胸の前にかざし、右手首をその上に…… 右手の人差し指と中指だけを伸ばし……怪物を狙う! 「はぁっ!」 右手の伸ばした指から白い光弾を発射! 光弾は怪物に命中! 左肩を吹き飛ばした! 「オオオォォッ!?」 左腕を失った怪物は振り向き、右腕を振りかぶった…… 右手から鋭利な爪が伸びる! 「クゥゥゥッ!」  そのまま女戦士にむけてツメを振り下ろした!またも道路が割れる!しかし女戦士はツメの一歩内側……最小限の動きで回避し、怪物を正面から狙う! 「終わりよ」 女戦士は左手で右手首を掴み、開いた右手から光球を発射!光球は怪獣の口の中へ飛び込み……爆発! 「ウウゥオオォォッ!?」  怪物は上下真っ二つに裂けた! 怪物の下半身が倒れ……上半身が道路へ落下。死骸は闇夜に溶け……黒い霧になって蒸発、怪物がそこにいたという痕跡は、道路のひびだけになった。 「これで終わりだといいのだけれど」 女戦士は怪物が倒れた地点を睨み……踵を返す。 「とぅ!」 街灯の上にジャンプそこから建物の屋上にジャンプ、さらにジャンプを繰り返し女戦士は姿を消した…… ―――――――― 彼女の名は白銀のセツ。星の導きに選ばれた少女だ。  宇宙の星々には光と闇……2つの属性があり、平時はバランスを保っている。だがそのバランスが崩れた時……それを正す自己防衛機能が宇宙に備わっている。それにセツは選ばれたのだ。  大企業の令嬢として、決められた道を歩んできたセツ。彼女にとって、与えられた使命はとても魅力的に感じた。彼女が得た【白の力】は遠距離魔法を得意とする力。魔力の扱いに長け、高い攻撃能力を持っている。  そうして戦う日々の中で……セツは【青の力】に選ばれた女性と出会う。