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刀剣霊術使い『阿月 凛』/和菓子に目がない女の子

彼女は代々霊能力者として名を挙げており、霊術五大家の一つに数えられている『阿月家』の血を継ぐ者。阿月の血を引く者は、優れた『刀剣霊術』を扱い、凛も例外ではない。 ー第一話ー 彼女は、ある男の存在を知った。 『現代最強の霊能力者』と謳われている男。荒河 禍禪。 その男は特別な家系という訳でもなく、突然変異で最強の霊能力者に成り上がったのだ。 そんな男の存在を知った凛は、自身の無力さを知った。 「努力というのは、彼のような全てを凌駕する『圧倒的な天才』には絶対に敵わないのではないのか。いくら頑張っても無意味なのではないか、と。」 そんなこんなで、鍛練に身が入らない日々が続いていた中、ある任務でその男と関わる機会が訪れた。凛は訊かずにはいられなかった。 「……あの、荒河さんですよね。一つお訊きしたい事があるのですが、宜しいでしょうか?」 「ん、キミは阿月の子だね。何でも訊きなよ。今回の任務は結構凄い事になりそうだしね。」 凛は、これまでの事を愚痴るように話した。初対面であるはずのその男に。 「努力というのは、意味があるんでしょうか?努力というのは、必要なのでしょうか?私は、貴方のような絶対に超えられない壁の存在が……あまりにも辛いのです……。」 暫しの沈黙の後、荒河が口を開いた。 「……そりゃ、大層なお悩みだな。少なくとも、今のキミがいるのはキミの努力があったからだろ?」 それに、と禍禪は続ける。 「俺には分かる。キミの努力は、いずれ俺を超えてしまうだろうよ。」 「私が……貴方を……?」 「ああ、そうさ。聞いたことがあるかもしれないが、俺は遠い未来を視る事が出来るんだぜ。そんな俺が言ってるんだ。間違いない。」 阿月は心の底では理解していた。それが気休めにすぎない言葉だと。しかし、今の彼女にはそれで充分だった。 「……そう、ですか。」 「おう、キミは強いからな。当然俺も負ける気は更々無いけどな。」 と、禍禪は軽いストレッチを始めた。 「……ふふっ。荒河さんって、想像していたよりも、ずっとお優しい方みたいですね。」 「一体どんなやつだと思われてたのか、気になる所ではあるが、そろそろ任務が始まる時間だ。それじゃ、お互い最善を尽くそうぜ。」 「はい。私、“頑張り”ます!」 その日、荒河 禍禪は消息を断ち、表舞台から完全に姿を消した。 唯一分かっているのは、彼は間違いなくどこかで生きているという事だけ。 阿月 凛は彼を超える為、そして彼を探し出す為、今日も“努力”を惜しまない。