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"雪原の帰郷者"ロシース・カリア

世界都市イーリウスで生まれた少女は、両親の深い愛情に包まれて育った。 イーリウス――それは世界中の株式が集まり、貿易が交差し、各国の思惑が渦巻く場所。 富と権力、そして外交の中心にして、世界の均衡を支える“心臓部”であった。 だがある日、そのすべては崩れ去る。 かつて打ち破られたアリウス第三共和国の敗戦のあとの混乱の中で生まれた"怪物"未来派国家社会主義アリウス労働者党『ファナス・アリウス』。 屈辱と憎悪を抱えたその国は、復讐を掲げて再び立ち上がり―― 少女の祖国へ、そして世界都市イーリウスへと宣戦布告した。 鋼鉄と血液の津波は、瞬く間に世界の中心へと迫る。 両親は、せめて我が子だけでも生き延びさせようと決意する。 人々で溢れ返る東方行き最後の便に、少女を無理やり押し込んだ。 ――それが、家族との別れになった。 その後、少女は孤児院で育てられることになる。 だがそこは劣悪な環境で、数年にわたる過酷な日々を強いられた。 「もう一度、両親に会いたい」 その想いは、歳月とともに薄れるどころか、むしろ強くなっていった。 やがて少女は孤児院を抜け出す。 手にしたのは、そこにあった粗末な衣服、ナタ、猟銃、そして破り取られた魔導書の一ページ。 そして、自らに与えた偽りの名―― 『ロシース・カリア』 旅は長く、過酷なものになるだろう。 目的とする者たちが、いまも生きているかどうかすら分からない。 答えを知る手がかりはただ一つ。かつての世界都市イーリウスに記された死亡者名簿。 ――それでも。 たとえわずかでも希望があるのなら。 その光が、この手の届く場所にあるのなら。 その手で掴みに行くしかない。