【イヴが記憶をなくすまでの経緯】 2XXX年。この世界にはサイボーグ手術などの高度の技術は、とっくの昔から存在していた。 ーーそれと同時に、ここでは第4次世界大戦が起きていた。 --- 戦火が散り、あちらこちらが崩壊しつつある、ヨーロッパ某国、そこにいる15歳の少女イヴは、やはり戦争から逃げる生活を送っていた。 今後いっさい現れないだろうと思われていた、独裁者が支配する恐ろしい国から逃げるための生活を、彼女は送っていた。 --- そこから少しときが経った、9月16日の出来事である。国が恐怖の宣言をかかげたのだ。 それは、『このままでは戦争に負ける、なので、"15歳までの全国民を軍に徴兵する"』という内容であった。 ーーそれは、"イヴが軍に連れていかれる"という事実を告げる。 --- そして、その宣言の次の日(9月17日)、宣言通り、軍に連れて行こうと、政府の人がやってくる。 彼らは、母(父は軍人ですでに出兵している)を銃で脅して、イヴを、無理やり連行していったのだ。 連行される前、最後の母の発言は、「無事に、家に帰ってきてね」 ーー連れていかれるイヴ、遠ざかる母の姿。イヴは、宣言のとおりに、軍に連れていかれた。 --- 「軍の全員がサイボーグ手術をする時代であり、サイボーグ手術をしない兵士など、使い物にならない」 との理由で、イヴは、軍の人に、言われるがままに、手術を受けることになったのだ。。 "手術が失敗することなど全くないぐらい、医療は発達している。大丈夫だろう。" ……この時は、イヴも、軍の人も、そう……誰もがが信じて疑わなかった。 ーーそして、手術は失敗した。 --- サイボーグ化には成功した。代わりにイヴは記憶を失ったのだ。 イヴは、母の最後の言葉も、母の顔も、父の顔も、何もかも失った。 軍の人たちは、絶望した顔で、記憶を失ったイヴを眺めていた。 イヴは、絶望すらしなかった。 何もわからないイヴは、ヒトさの表情も分からずに、軍の人に、専用レーザー兵器「イーヴァ」を持たされることになった。 ーーそして、そのまま訓練と殺し合いの日々が始まりを告げたのだ。 --- イヴは命の重みすら忘れてしまった。何もかもわからなかった。ただ戦っていた。 そんなイヴの唯一の救いは、自分の愛銃(イーヴァ)であった。 ーーイーヴァが、記憶を失ったイヴにとっての、唯一の友だちといえる存在であった。 --- ある時、イヴはイーヴァにこう問いかけた。 「……ねえ、私って一体誰なんだろうね」 それに対して、イーヴァはこのように返す。 「……それは私にもわかりません。ただ、いつか、『自分が誰か』は、いつかわかるようになると思いますよ。」 ーーイヴの記憶は、正しい形で戻ってくるのだろうか。それとも、もう二度と正しい形で戻ってはこないのだろうか。