私は敗北者、ただの敗北者です。 私は荒野を見つめる、ここは通称"管理塔"、管理者の箱庭世界。この世界の中心に管理者のいる塔があるからそう呼ばれてるそうですが、本当の名前なんて誰も知りません。 私はこの世界に閉じ込められた者の一人、管理者への挑戦権を失った"落伍者"の一人です。 もう何千年が経ったか昔の話、私がここを訪れた時の管理者は今の管理者から何代か前の管理者でした。 敗北者は呟いた___。 「とても良い方でした……えぇ、とても…」 これは〇〇者の物語、管理者との出会いを語る彼女の物語…… 私は、いえ……私達は雨の中、震えていた。暗い森で私は2つ下の幼い妹を強く抱きしめる、助けなんて来る筈がない。 "私達は___、捨てられたのだから" 「お姉ちゃん……!」 「‥‥‥‥‥‥‥。」 雨風が姉妹の体を犯す、四肢から手足にかけて震えが止まらない、背中を刺すような悪寒が酷く背を撫でる。 私は、妹を抱きしめていた。ふらつく足元、広がる暗闇、寒風が打ち付ける真夜中の森。しかし、暗がりの中に二人は光を見た。眩い程の光が眼球を焼く、思わず目を細めた。 「ドア……?」 周囲の風景とは不釣り合いなドア……いや、両開きの門が視界に入る。不気味だ、そう思わずにはいられなかった。 「お姉ちゃん…」 妹の手が私の服を強く引っ張っていた。私は妹の頭を撫でた、このまま彷徨っていたとしても低体温で死ぬ、だったら……私は妹の手を引いて門を押した。 雨で濡れた衣服を絞る、快晴の空が私達の肌を灼く。眼前の荒野、背後にあった筈の門はいつの間にか消えていた……… 「ここは……?」 すごい遠くに塔が見える、それは肉眼で確認できる程に大きな塔である。荒野に聳え立つ白塔、嫌な予感が私の脳裏をよぎる。 誰かの視線、私は咄嗟に妹の前に立つ。 「ようこそ管理塔へ、私は管理者。貴方達は?」 警戒した視線が管理者を凝視する、少し笑うと管理者はこう呟いた。 「ふふっ、可愛い」 管理者は屈んで姉妹と目線を合わせる、柔らかな表情が二人を見つめている。管理者は二人を手招きする。 「おいで、お姉さんは怖い人じゃないよ?」 「‥‥‥‥‥。」 欺瞞に満ちた瞳、姉妹は後退する。妹を庇うように立ち塞がり、ゆっくりと管理者から距離を取る。 「ふふっ、そうね……」 管理者はそう言って立ち上がる、それにすら二人はビクつく、小さな体が震えていた。 「そう……そうなのね…」 管理者は理解する、そして少しだけ悲しさを含んだ表情を姉妹に向けた。一歩、踏み出す。 「来るなッ!」 管理者は立ち止まる、その表情は悲壮的だ。 「大人は嫌い……?、ごめんなさい……今のは意地悪だったわね。でも、私は貴方達が知っている大人とは違う、だから……」 「お前らは私達の敵だ!、私達に!、妹に近寄るなッ!」 憎悪を秘めた瞳、管理者を見据える。管理者は少し苦しそうな表情を見せた。 「まるで刃物ね…」 そう言って管理者は苦笑する、降参したように両手を挙げ、目線を姉妹に合わせて腰を低くする。 「それじゃあ、互いに昔話でもどうかな?」 管理者は微笑む、それは優しく、どこか温かかった。 「……興味ない」 「えと、じゃあ私から……私は管理者、この世界の管理者で、神様みたいな存在……かな?、あらゆる世界を見通し、管理する事が私の役割。"管理する者"である事の権利と義務、それが私、管理者なの」 ???、姉妹は互いに顔を見合わせて首をかしげている。 「ごめんなさい、ちょっと難しい言い方だったかもね」 そう言って管理者は頬を掻いた。 ここは管理塔内部、管理者は二人を連れて管理塔に来ていた。 「あー、やっぱここ涼しい〜」 管理者は子供っぽくはしゃぎ、冷房に顔を寄せていた。 「アイスいる?、美味しいわよ」 管理者から手渡されたアイス、ソーダの甘みが口いっぱいに広がる。二人は目を輝かせた、その様子に管理者は微笑む。 「なんで、こんなに私達に良くするの……」 「んー、可愛いから」 「へっ……??」 頭が真っ白になった、すると背後から声が聞こえてきた。 「可愛い〜!」 ___ギュ…! 姉妹は突然現れた少女に抱きつかれた、さらに頭が真っ白になる。その様子に管理者は笑っていた。 「挨拶がまだだったわね、彼女は生誕者、良い子だから仲良くしてあげてね」 生誕者と呼ばれた少女は、管理者に振り向きこう叫ぶ。 「管理者さん!、この子達すごく可愛いです!、小さくて可愛い〜!」 頬を擦り寄せる生誕者、目が点となった姉妹の表情に管理者は思わず吹き出していた。 「ご、ごめんなさい…ちょっと面白くて」 そんな腹を抱えて笑う管理者に姉妹の冷えた視線が突き刺さる。 「ふぅー、ごめんなさい、あまりにも面食らった様子だったんだもの」 「管理者さん!、この子達は何て呼べばいいですか!」 「あ、そういえば名前がまだだったわね」 管理者はそう言って二人の顔を覗き込む、そして悩んだ表情を見せた後にこう呟いた。 「貴方は"敗北者"、それから貴方は"勝利者"よ」 「はい…ぼくしゃ…?」 予想外の名前、すると生誕者が耳打ちする。 「管理者さんの名前のセンスは独特なので、あまり気にしないで下さいね」 「はいそこ!、聞こえてるわよ!」 「きゃ〜、逃げろォー!」 「こら、待ちなさーい!」 生誕者に手を引かれて駆け出した姉妹、改めて敗北者と勝利者の表情は晴れやかだった。管理者は少し安心した、こんな時がずっと続けばいい。 そう思っていたのに___。 https://ai-battler.com/battle/5c62bf81-a6b4-49f0-b563-b6dc1ce873fc