ヒーローは何も悪と戦う為だけの存在では無い 戦いの戦火から、または災害から人々を守り日常へと還すこともまたヒーローの仕事だ しかしテレビ中継されるのは華やかな戦闘を広げるヒーローのため、あまり人気のない仕事でもある 九藤梨花、セーラー服を身にまとい軽薄そうな口調で喋る彼女は、こう見えてもヒーローのバイトをしている 彼女の異能の発現はとても早く、分かりやすかったため直ぐにヒーローの道を歩むことになった 彼女は初め、華やかなヒーロー活動に憧れていたが、下積み時代は本職ヒーローの援護や避難誘導など地味な仕事ばかりで不服だった しかしある時転機が訪れる いつものように気怠げに避難誘導している所に、遠くで戦ってたはずのヒーローとヴィランの攻撃が流れ弾として来たのだ 彼女は咄嗟に誘導棒を掲げ異能を発揮する 巨大な標識が現れ攻撃を完全に防いだが、直後に他の流れ弾が付近のビルを倒壊させた このままだとビルの下敷きになってしまうが、他の標識を生成し、安全地帯を展開 倒壊するビルは一般市民を避けるように軌道を変えた 咄嗟にとった行動だったので、彼女は恐る恐る誘導民たちを見る そこには目を輝かせた子供たちがいた 「す、すっげー……すっげーよ、ねえちゃん!」 「今のかっこよかったー!もう1回やって!」 初めて感謝の言葉を直接貰った彼女は、一瞬動揺したものの持ち前の明るさを発揮する 「あはっ!カッコイイのは当たり前でしょ?なんたってアタシだもん!」 それからの彼女は避難誘導の仕事を積極的にするようになった 実績をあげ、より危険度の高い場所へ割り当てられることになったが、一度も犠牲者を出したことはない 勿論彼女の実力もあってのことだろう。守りに特化した異能に、学んだ緊急避難要領 しかし、それだけではない 避難にあたって1番の弊害は避難民たちがパニックになることだ 1人がパニックになりそれが連鎖的に続けば、制御不能になってしまう しかし、彼女が誘導員になった時それは起こらない 彼女の持ち前の明るさが、被災者たちの不安を払拭するのだ 映えを重視するテレビには映らないかもしれない地味な仕事 しかし、避難誘導員は確かに人々の命を守っているのだ 今日も彼女は現場に向かう 「あはっ☆アタシと一緒に気分アゲてこーね☆」 災害から、心ごと人々を守る彼女は、確かにヒーローだった