ランカスター王国のヴィルフォード辺境伯家は、大国オークランドと接し、国境を守護する武家として、多くの名だたる騎士を輩出してきた事で知られる。 その家の三女として生まれたコーネリアもまた、父より武人としての薫陶を受けてきた。 だが哀しいかな、彼女には剣の才の魔術の才も全く無かった。 「武家の子女がなんたるザマだ」 内外から失意と嘲笑の謗りをを受けながらも、コーネリアの瞳が曇る事は一切なかった。 彼女は齢11にして家を出奔し、諸国を巡る修練の旅に出る。自らが扱える力を得る為に。 その旅路は足掛け8年に及び、家の者たちが忘れ果てた頃、コーネリアは帰郷した。鍛え抜かれた身体と、尋常ならざる東洋の拳術を身につけて…。 その拳は、山をも崩し龍をも滅し、家の者たちを圧倒した。 「あらあら? 騎士たる者の定義とは、単に剣が扱える事ではなくてよ? 貴方の攻撃、そよ風程度にしか感じませんでしたわよ?」 コーネリアは今日も不敵に笑う。彼女の絢爛たる道は、今始まったばかりである。