乙丙玄師は、自らの血を戦化粧へ変え、顔に描いた“役”を肉体と剣へ降ろす戦化粧呪術《隈取》の使い手である。 退魔妖刀《春鶴》《古鳥蘇》を操る二刀流の剣士であり、怪異討伐や呪物回収を請け負う無所属の術師として、《修羅役者》の異名を持つ。 青紫の光沢を帯びた黒髪と、灰紫色の切れ長の瞳を持つ青年。 細く鋭い中性的な顔立ちは整っているが、乱れた髪、目元の隈、頬の傷、乾いた血痕が、その端正さへ戦場を生き抜いてきた生々しさを残している。 平時は気怠げで不愛想。 肩書や上下関係に無関心で、言葉遣いにも遠慮がない。 しかし実際には周囲をよく見ており、疲労を隠す者には黙って水を渡し、怯えた者の前では妖刀を布で覆い、負傷者がいれば気づかれないよう自分の立ち位置を変える。優しさを語ることは不得手だが、必要な配慮を行動へ移すことには迷いがない。 玄師の強さは、速度や剛力といった一つの資質にあるのではない。 敵の呼吸、重心、視線、傷を庇う癖、術式の起点を数合のうちに読み取り、戦況に最も適した“役”を即座に選択できる判断力にある。