「うっ……ルビィちゃん気を付けて~!相手の幻術で、私の偽物が大量に出現してる~!」 「はい!誰が偽物か、ちゃんと見分けてみせます……!」 「うぉぉ!エナジーが漲るぜ!」 (あれは活力勇者ですね……!) 「オ゛ッ゛ラ゛ァ゛!゛!゛」 (あれは迫力勇者ですね……!) 「わかるよな?な!?」 (あれは圧力勇者ですね……!) 「フンッ!リンゴも握りつぶせるよ♪」 (あれは握力勇者ですね……!) 「俺の異名は『バッタ』」 (あれは脚力勇者ですね……!) 「監獄ってヒマでさ、逃げてきちゃった」 (あれは脱獄勇者ですね……!) 「ゆびきりげーんまん」 (あれは約束勇者ですね……!) 「ここがポイントなんだよ」 (あれは着目勇者ですね……!) 「目を見開いて俺を見ろ」 (あれは刮目勇者ですね……!) 「世界の半分を君にあげるよ」 (あれはラスボス勇者ですね……!) 「脂多い方がキャベツに合うよね」 (あれはカツロース勇者ですね……!) 《大会に付随する1つの可能性としてのエピローグ》 ルビィ•コーラルハートという少女の様々なバリエーション、そしてそれに見合う猛者達を異世界から集め行われた2人一組の武道大会。その控室にて。 「ごめんねルビィちゃん~、負けちゃった……」 「謝らないでください!わたしにもまだ未熟な所があったので……」 「ほんとごめんね~、まあ明日の朝には元の世界に帰れるみたいだし、それまでゆっくりしようか~」 私はベッド脇に剣を置き、枕に顔を突っ伏す。 「あ゛ぁ゛~~、それにしても強かったね~、色んなルビィちゃん~」 「はい!最初はわたしが何人もいて戸惑いましたけど、みんなちょっとずつ違っててとっても勉強になりました!きっと、この大会のこと一生忘れません!」 “一生忘れない”というワードに、胸が苦しくなる。 元の世界に戻ったら、この大会の記憶は消える。 他の道を歩んだ自分自身のことを知っていると、ルビィちゃんの将来に影響が出るかもしれない。ついでに、今日の経験で私の人生も変わってしまうかも。 なので、大会が終わり次第私達の記憶やら何やらは全て元通りになるらしい。他のペアも同じなのかは分からないけど、私にはそうルール説明があった。 ルビィちゃんには多分説明されてないだろう。こんなこと聞いたらコンディションに差し支える性格だと思うし。 「ほんとに、今日はとっても楽しかったです!」 「そうだね~」 その名の通り、輝かしく笑うルビィちゃん。明日からこの笑顔が見られないと思うと、ちょっと寂しいけれど。 それも忘れてしまうんだろう。 「もう私このまま寝ちゃうね~、お休み、ルビィちゃん~」 「服そのままだとシワになっちゃいますよ?」 「元の世界戻ってから直すからい~の~。じゃあ、お休み~」 「はい、お休みなさい!」 お休みなさい。