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ルル//[スキル]厄災[体質]魂がなく体と精神だけがある[性格]落ち着いている、常に余裕、無口

「…ここは何処?あれ…私はいつからここに居るんだっけ」 私は気がついたらこの大地に居た。 この小さな草原の丘上に座っていた。 服は着ている。だけどボロボロだった。私にはどうすればいいのか分からない。 私は宛もないまま歩こうと一歩、踏み出そうとした。 「…あれ?動けない」 私の足は全く動かない。私の足が鎖で繋がれこの地面に結ばれているのかという程に動かない。 地面を地団駄していても地球には全く響かない、そんな感じだ。 「困ったな…どうしよ」 これは俗に言う『詰んだ』という状態なのだろう。 このままでは空腹で死んでしまう…と言うか、私はいつからこの丘に居るんだ? …思い出せない。 暫く悩んでいると、私の体は徐々に沈んでいっている事に気がついた。 …なんだ?どういうことだ? 沈んでいっている事に気がつくと、体は沈むのを辞めて浮き上がった。 増々謎は大きくなるばっかりだった…が、命に別状は無さそうなので放置することにした。 私は考える考える…それはもう顎に手を当てて俯いたりおでこに人差し指を突き刺して考えた。 そこで、この沈むのを利用して移動できないか、と考えついた。早速やってみよう。 …意識してやるのは難しいな。中々沈まない。 結局、一週間くらいして意識して沈む事ができるようになった。 これで腰下辺りまで沈んで元に戻す。すると、私の体はバネのように飛び跳ね浮遊し始めた。 「あっ…えっ…?…私飛べたの…?」 まぁ…飛べたんなら飛んで何処かへ行こうかな。 私は浮くことができると知るとふわ〜っと宙を舞う妖精のように移動する。取り敢えず目についた大樹の下へ向かう。 大樹の下には髪が金ではなく黄色でポニーテールの少女が居た。 身なりがとても整えられていて頭につけている紫色のシュシュはシルクでできていた。 「……そこの君、ねぇ。私今何処に行けば良いのか分からないんだ…」 しかし、目の前の少女は私を無視した。まるで聞こえてないかのように。 「…はぁ…居るわけないか…あはは…。…お姉ちゃん、ここの大樹に寄りかかってお昼寝するの、好きだったなぁ…。」 この少女には姉が居たらしい。それもとても仲良しなようだ。 「……帰ろうっと」 どうやら、この少女はお家に帰るらしい。この少女について行こうかな。 「ただいま〜…」 ここが少女の家か。とても裕福そうな家だ。世界に有数のお金持ちって程ではないが。 「…お母様もお父様も気が滅入っちゃってるや…」 「………何か…あったのか?」 「……」 少女は何も言わずに階段を上がり自室と思われる部屋に入っていく。 「ひぐっ…うぅうぅ…ぐすっ…」 少女は枕を強く抱きしめると大粒の涙を流し始めた。その決壊したであろう心は必死に泣き声を抑えていた。 「……何をそんなに悲しむ?なんで?」 やっぱり目の前の少女は反応する事は無い。 お姉ちゃん…か、こいつのお姉ちゃんの姿、見てみようかな。 私は沈み一階へと降り煙が漂っている部屋へと向かった。 紫髪で三つ編みをリング状に編んだ髪型の小柄そうな少女。こいつ、もしかしたら妹よりも小さいんじゃないか? 私は色々その部屋の事を拝見していると、お線香の火が私の服に引火し私の体は燃え始めた。 こういう時は近くの水場に飛び込めば良いのだ。…最も近いのは風呂場だろう。 探そう、風呂場を。 …と、思って風呂場を探したらすぐに風呂場を発見できた。 とってもラッキーだ。丁度水も張られている。 私は水に浸かり消火をした。既に服はただの布切れに変貌していた。 「…汚れては居たが綺麗なドレスだったのに…気に入ってたんだけどなぁ…」 ……さっきから違和感があった。 ずっと既視感があるのだ。 あの金髪の少女も、遺影の写真も、この風呂場の光景も。 ……なんで? 私はその瞬間、恐怖に駆られた。足は震え、私は思わず腕で体を守る様に覆った。 なにか…来── ──っぷは…何が…何が起こった? これは…地面が赤くなっている…熱されているのか…? この家は…この…家は… 家はない…瓦礫…あの少女は? …居ない。辺りに焼け焦げた血肉の匂いが…漂っているのか? わからない…なんでわからない…? 待て、なんで私は無事なの…? 傷一つ無いじゃないか。私って…人間だよな?…違う。私は人間じゃない…? 私は…人間の姿をしたバケモノ…? ……これ以上、考えないようにしよう。 とても…たえきれない。 とても…とても…涙…なんで… 知らない…親しくもない…名も笑った顔も知らない! なのに…なのに! …なんで… …いや知ってる。 知り尽くしてる。 名前も笑った顔も…あの笑顔も!あの涙も! 全部!全部!知り尽くしてる! 私は…私は人間! 生まれた時から『災害』を運ぶ存在。私のせい…私のせいで…私のせいで!少女…私の妹…ララは!死んだ… そうだ。私は肉体と精神だけがあって魂が死んでいる、人間とは言えない存在。 全て思い出した!私の心臓は地球の如く動いている。 「お父様…お母様…ララぁ…私は生きてる…生きてるんだよぉ…私を置いていかないで…」 私を…一人にしないで…。 涙でぐしゃぐしゃになった頭を地面に叩きつけ厄災を憎んだ。 痛くない。だけど私は生きている。 「厄災…私の力なら…私に自由に操らせてよ…」 その時、辺りの風景が逆行し始める。 「…これは…?」 崩れた建物が元通りになり、色々な物が元通りに戻っていった。 火が引火したドレスが再び灰から布に戻り、私が水に入ったときの水飛沫は浴槽に戻る。 「……もしかして…時間が戻ってる?」 もしかしたらこれなら── ──あの少女を救えるかも知れない。 山に落ちた日、橙に染まる空。 「…ここは何処?あれ…私はいつからここに居るんだっけ」