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【新世界を拓く天使の懐刀】平次・ファスゴッド

 その妖鬼の男は、一切の素性が明かされない。 狂気の傭兵団、十三ルーブルの銀翼のNo.2であり、異端の天使が最も信頼を置く懐刀。それ以外の情報は何も無い。 ただ、その天使を護る為だけに存在するような鬼。 その顔に刻まれた幾つもの刀傷はもう古く、しばらく戦っていないように思えるが、それでも尚、彼の発する威圧感は銀翼の天使とは別ベクトルで狂気的だ。 きっと、天使との別れが来るその時は、石となった小さい膝より低く傅いて、太刀を置き、ただぽつりと。 「…お疲れ様やった。ゆっくり休みなはれ。ボス。」 そう、シワを深くしながらつぶやくだろうと思えてしまう。そんな想像が簡単にできる。それくらい、天使や天使の描く世界に心酔し、寄り添っている。 一目見ただけでも、この下っ端諜報員の俺でも分かった。今、この電報を打っている指が震えている。どうにも、俺にはその種も歳も超えた愛情が、狂気にしか見えない。 化け物が、化け物を。愛するだって?  奴らは人類の脅威だ。確実に。 追記 すまない。途中から日記になってしまった。中央合衆国諜報員としてあるまじきことだが、少し錯乱していた。 本当に報告したいことは、あの平次と呼ばれる妖鬼のスキルと魔力について。 あの妖鬼には、それらが一切 ーーーーーーーーーーーーーーーーー ー中央合衆国政府議事堂に置き去りにされていた、鮮血が染みた不審な魔力電報よりー