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チの航行者【コード・ボイジャー】

「…通信を確認、電力温存のため観測機器CRSを停止。」 また一つ、ボイジャーが機能を喪失した。宇宙線サブシステム「CRS」、宇宙線や高エネルギー粒子を測定する観測機器。これでボイジャーは七つ目の機器を停止させ、ほとんどの機能を喪失した。 「いつ会えるんだい?宇宙人さん。」 深淵とも言うべき、黒一色の空間。眩いように見える無数の光点はあまりに遠く、その身にあたる陽の光もなければ、少なくとも進行方向へ幾光年に天体はおろか小惑星さえ通らない。ひどく静かで、暗く孤独な冒険はいつまでも続いている。 誕生 知的好奇心とは終わりがない。知りたいという欲望を抑えることはできず、知ったとしてもまたその先を知ろうとする。 人類史の始まりから何世紀か、何十万年に渡り探索された地球。人類は世界中に散り、現代社会はついに地表のほとんどを網羅した。 ここまで来て、人は今なお未解明な問題へ辿り着く。 「人類以外の知的生命体はどこにいる?」 人は世界を制覇した。しかし、地球上に彼ら以外の文明を持つような存在などいなかった。なんて悲しいことだろう。人類は世界でひとりぼっちの知的生命体なのだろうか? そんなことはない、地球にいないのなら「その外はどうなのか?」。人間はまだ諦めない。 地球上には未だ人里離れた秘境の地から何人たりともたどり着けはしない海底洞窟まで、同じ星の中でさえ知り得ない領域で満ちている。 しかしながら、現実はRPGのように順番など決まっていない。次に探索する場所は自由に決められる、サンドボックスかあるいはオープンワールドな世界である。 人々は地球の未知より、さらに壮大な未知を夢見た。空っぽの暗黒界「宇宙」の存在だ。 Search for Extra-Terrestrial Intelligence、略してSETI。地球外知的生命体の探査に夢見人達は心血を注いだ。地球外のメッセージを受信するPassive SETIと、地球外にメッセージを送信するActive SETI。初めは電波で、様々な銀河へ悠久に届きもしないメッセージを送った。 そしてついに、宇宙探査機にして物理的なActive SETIメッセージ「ゴールデンレコード」を搭載した希望の機体が完成した。 航行者「コード・ボイジャー」、宇宙と人とを繋ぎ、銀河を冒険するメッセンジャー。 機体は人類の思いを載せて、無限の彼方へと旅立った。 〜-〜-〜-〜-〜-〜-〜-〜-〜-〜-〜-〜- 機体は現在、地球から最も遠くに到達した人工物として知られている。