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《氷精の魔女》アヤメ

師匠は、私の恩人だ。 故郷を滅ぼされ、人攫いに捕まり 違法奴隷として売られそうになった私を、 彼女は助けてくれた。 自由と居場所、それに尊厳を与えてくれた。 最初は只の好奇心だったらしいけど、 私の目に写る彼女は、間違いなく私を愛してくれた。 そんな師匠のことが、私は好きだった。 だから私は「あの魔女」を許せない。 無抵抗の師匠に、おぞましく燃え盛る焔の刃を向けたこと。 優しい彼女の足を奪い、あまつさえ殺そうとしたこと。 ……私と同様に幼かったあの魔女は、 しかしあの頃から既に「灰の魔女」だった。 今も思い出すだけで絶望の気持ちが蘇ってくる。 許せない。 しかし師匠は、魔女ベラは、 奴にはその資格があったと云う。 そして あそこで刃を止めた事実こそが 彼女の本質だと諭すのだ。