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【そして冬風は旅立つ】イータ・クライアム

それは振り子が落ちる先のひとつ。 使命を帯びた彼女へ、旅立ちの鐘が鳴る。 //////  彼女らの祖先たる邪神を討つだけでは留まらなかった人々の憎悪と怒りは、支配される側だった眷属ですら末裔に至るまで族滅するまで治まらなかった。  故に彼女は幼くして親を、隣人を喪い、誰も居なくなった故郷で墓守として生きる運命を背負う……それが本来の在るべき姿である。  しかし、選択によって可変する未来は往々にして全く異なる結末を迎えるものである。  邪な神を討ち滅ぼすまでは同じ道を歩んだこの世界は、怒りの矛先を末裔達にまで向ける事は無かったのだ。  倒すべき敵はあの者達では無い、そう自分を律する事の出来た人々の中にあった“正しい怒り”が運命を変え、支配から開放された彼女達は平和な日々を生きていく。  愛されて育ち、誰かをいたわる優しい心を持って成長した彼女は未だ混迷の中にある世界を思い、とある望みを抱いた。 ―――――私は、嘗て私達と同じように支配に虐げられている人々を助けてあげられる力になりたい。  斯くして、元は永遠に留まり続ける筈だった彼女は、故郷の皆に見送られて旅に出る。  自分自身の可能性を、内に宿る更なる『力』は力無き誰かを守る為にあると信じて。