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第一次攻撃開始

「クソッ…こんな数、いったいどこから…?」 空に浮かぶ艦隊から打ち出されるミサイルと砲撃の雨が次々と三頭竜に炸裂していくのを横目に、「偽りの邪神」は思考を巡らせる。 少なくとも数分前まではこの艦隊は頭上になど浮かんでなどいなかった。ただ飛来してきただけのであれば、三頭竜の探知圏内に入った瞬間に存在を捉えられることが可能なはずだ。 であれば、考えられる魔術は気配遮断か透明化。もしくは… 自身に向けて放たれたミサイルの一つを竜の鱗で覆われた腕を振って消し飛ばしながら、彼女は一つの結論を出した。 「あぁ…転移系統か」 並の隠密系統の魔術なら三頭竜の高度な魔力探知に引っかかる。その上、こういった魔術は本来自分を隠すものであり、他者を覆い隠すものではない。そのうえ、対象が艦隊などの巨大かつ大規模な物ならなおさら不可能だ。 ならば、何者かが転移系の魔術で艦隊まるごと私の頭上に送り出したに違いない。 こうしている間にも地上から休む間も無く飛んでくる攻撃を跳ね返し、爪と尾による複合攻撃で反撃を行う。 ならば早急に動かなくてはならない。 一刻も早く術者を撃破しなければただでさえ厄介な艦隊の他に何が出てくるかわかったものじゃないし、今警戒するべきは短期決戦に持ち込まれる可能性のある「切り札」だけ。どうせ持久戦になればこちらの勝ちは明白なのだ。艦隊と他の者は術者を潰した後にゆっくりと遊んであげればいい。  三頭竜の三つの首のうち適当な頭に指示を送り、攻撃を一時的に止めさせ広範囲の探知に集中させる。これで術者と彼女らが持ち込んだ「切り札」の位置を特定し、先手を打つ。 大規模の戦闘ではただの力技だけでなく「機動力」も必要なのだと未熟な彼女らに教えてやらなくては。 「さあさあ、必死に逃げてみなよ。どこまでも追いかけてあげるからさァ!!」 三頭竜の一番右の頭が探知開始の合図である咆哮を上げるのと その頭が「一撃で貫かれ消滅した」のはほぼ同時だった。 「…は?」 その光景に、彼女も思わず声を漏らした。 無理もない。例え軍隊が一日中休まず戦車と爆撃機で攻撃を行ったとしても傷一つ付かないであろう三頭竜の鎧のような皮膚と魔力装甲が何者かに一撃で、それでいて三頭竜の集中探知でも捉えられない雷光の如き速度で貫かれたのだ。 「一体、何が起きてッ…!?」 「私の手は、盗むんじゃなくて"取り戻す"為にあるの。」 突然の声に咄嗟に振り返ると、半壊した建物の上に降り立つ「彼女」と目が合った。 「彼女」と目があったその時、彼女は自身が致命的な過ちを二つも犯していたことに気が付いた。 一つ目の過ちは、空に浮かんでいた艦隊を見たことで潜在的に彼女らの持つ「切り札」は巨大な近代兵器だと思い込んでいたこと。 もう一つの過ちは、 「機動力で負けていたのは自分の方」であったということ。 月光を背に建物の屋根に立つその少女の姿は、圧倒的な力を持つ冷酷な「悪」を司る神となろうとしていた彼女の脳裏に、一瞬だけたった一人のかつての相棒との記憶を思い出させた。 地獄の底にいた自分を見つけ出し、一寸先も見えないような暗闇から引きずり出してくれた恩人でもあり、幸せな夢のような時間を共にした親友でもある彼女のことを。 屋根の上の少女は黒いマントと首元の赤いリボンを夜風になびかせながら名乗りを上げた。 「だから私は私の正義を以て、皆の未来を掴み取る!」 「【夜空を舞う大怪盗】シーヴ、ここに参上♪」 【夜空を舞う大怪盗】シーヴ、三頭竜の頭部攻撃に成功! https://ai-battler.com/battle/38928d70-caf1-40a6-ae66-d7dd5ffe6937