中国史に登場する爆笑固有名詞を集めたキャラ 【元ネタ解説】 〇宇宙大将軍 南北朝時代の武将である侯景が作り出した官職。南朝の梁に反旗を翻した侯景は梁の首都である建康に入城し、武帝を幽閉して餓死に追い込む。その後に簡文帝を擁立すると、「相国・宇宙大将軍・都督六合諸軍事」という三つの官職に自ら就任する。「宇宙大将軍」とは和訳すると「全ての時間と空間における大将軍」という意である。 他二つについて 「相国」…これはオリジナルではなく先秦時代からある官職。現代で言う総理大臣。日本でも太政大臣の唐名として使われている(平清盛は太政大臣に就任したことから「平相国」「入道相国」とも呼ばれた)。 「都督六合諸軍事」…これも宇宙大将軍並のDQN官名。六合とは「天下」「全ての時間と空間」を表し、「都督~諸軍事」は「~の範囲で軍権を発動できる者」である。つまり「全ての時間と空間において軍権を発動できる者」となり、「宇宙大将軍」とほぼ同じ権限を有する官職ということになる。 その後侯景は簡文帝を弑して自ら帝位に就き「漢」を建国する(中国史で「漢」を建国するのはほぼ劉氏なのだが、なぜか侯景は劉ではないのにもかかわらず国号を漢としている)。しかしその支配地域は首都建康とその周辺しかなく、やがて湘東王蕭繹(武帝の子で簡文帝の弟。後の元帝)に攻められて建康を落とされ、逃亡中に部下に殺害された。蕭繹は建康に拠点を移さず、自らの地盤である江陵で新たに梁の皇帝に即位した(元帝)。 〇珍宝島 高校世界史では必ず登場する爆笑ワード。黒竜江(アムール川)の支流ウスリー川の中流域にある小島であり、大戦後の中ソ対立時代、ソ連と中国による国境紛争の舞台となった場所である。現在は中華人民共和国の黒竜江省に属している。 〇陳胡公満 西周時代の人物。西周から春秋時代にかけて存在した諸侯国のひとつ、陳の初代君主である。伝説的君主である舜の末裔とされている。 名前を分解してみると、「陳」は氏、「胡公」が諡号(死後につけられる名前。天智天皇、昭和天皇といった呼び名も死後に呼ばれる諡号である)、「満」は諱(いわゆる本名であり下の名前。東洋では本名=諱を呼ぶことは無礼であった。織田信長を「信長」、源頼朝を「頼朝」と呼ぶのは天皇か敵方の人間のどちらかである)。つまり本来の氏名は「陳満」となるわけだが……どちらにせよ口に出して言いたくない名前である。 なお陳の一族は後に一部が斉に亡命しており、その一族は田氏と呼ばれるようになる。斉の亡命貴族となった田氏は田乞、田常(田常は別名陳恒とも記述される。ちんこう……)の時代に権勢を握り、後に斉の君主の立場を奪って斉王族となる。キングダムに登場したヘビ食いの王様(王建)はこの田氏の王であり、陳胡公満の子孫ということになる。 〇威斗 前漢の帝位を簒奪し、新を建国した王莽が作らせた銅製の魔法の杖。北斗七星のような形をしており、宝石で装飾されている。王莽は「この杖を振るえば百万の軍隊も従う」と本気で信じていたという。なお王莽は数々の失政により赤眉・緑林の乱を招き、最後は更始帝の軍に追い詰められ斬殺されている。魔法の杖など初めから存在しなかったのだ。 この王莽、先祖は前述の田氏であり、遡ると陳胡公満(陳満)に行き着くとされる。王莽は陳満を「陳胡王」と称しているが……やはり口に出して言いたくない名前である。 ちなみに2023年は新の滅亡(王莽死亡)からちょうど2000周年となる。 〇神威無敵大将軍砲 17世紀に清で製造された大砲。現存するものには「大清康熙十五年(1676年)三月二日造」という銘文が見られる。 清軍によって使用され、ロシア帝国と衝突したカルバジン砦攻略戦で活躍した。