240610:大幅更新 --物語 その次元宇宙は、全ての次元宇宙において最も発達した科学を持っていた。 特に、その発展を支えたのがエーテル情報子の発見だった。宇宙の全ては満たされ、構築されていた。万物は統一的に記述された。 人類は宇宙そのものが巨大なコンピュータとして扱えることに気づいた。シミュレーション仮説が復古し、持て囃されたが、結局証明することはできなかった。 人類は光速度的に発展した。いや、ワープすら可能だったから、超光速度の発展だった。 科学上のあらゆる夢は叶えられた。 宇宙が耐えられるはずがなかった。 摂理に反していた。何故エーテル情報子は隠されていたのか。知る必要がなかった。アクセスしてはいけないものだった。 人類は綻びに気付いた。計算が合わない。エーテル情報子への直接的なアクセスは他の次元宇宙へのエーテル情報子の流出を起こしていた。 情報が薄まり欠落した場は空間的に消失し始めた。次元宇宙は崩落を始めた。 その頃には人類の領域は既に宇宙全体に広がっていた。混乱が起こる。 人類は叡智を結集し2つの打開案を取りまとめた。 打開案の1つは他次元宇宙への移動。ノアの方舟と呼ばれたその計画は、エーテル情報子の莫大な消耗と引き換えに人類の3分の1を数多の次元宇宙へと逃がすことに成功した。 打開案のもう1つはこの次元宇宙そのものを『客観的に静止し、安定した、別宇宙』に再構築する事だった。成功するかは未知だ。残った人類が無の空間に放り出される可能性もあった。世界は作れても生命が全て蝿になるかもしれなかった。 数多の星に設置された巨大な装置群が稼働した瞬間、その次元宇宙は平たく広大な世界になった。 人類は新天地で穏やかに暮らすことになる。 それが古代文明と呼ばれるものの成り立ち。魔法が生まれ、魔族が生まれ、魔王が生まれ、勇者が生まれ、精霊が生まれるもっと前の話。