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ニナ[悲しみの守護者]

これは…昔の…まだ"自由"だった頃の記憶… 私は人々から"世界樹"と呼ばれている大きな…どこか美しい樹の周りにある、"デルタ"村で生まれた、普通の人間だった…。そう、ただの…"普通"の…。 あれは何年前だったんだろう…今ならあの…いや、この樹が憎くて…怖くて仕方が無い…。 そして私が幼い頃…いつかは覚えていないけど、同じ町に住む少女、「クラネ」と出会った。彼女とはとても中がよく、"親友"という言葉が世界で最も似合う関係だったと言える程だった…。 私達は何でも一緒にやりたがった…そして好奇心旺盛だった… 編み物に挑戦するのも…お菓子作りも…お祈りも…鶏のお世話なんかも…"探検するのも"… でもそんな楽しい日常は…"ある日"を境に全て無かったかのように私達の前から消え去った…。 村は勇者が魔王を討伐した事でお祭り状態になっていた…。それと同時に世界樹は赤く…紅く光っていた…。 あの時近づかなければ良かった…呼び止めれば良かった…いや、「行ってみようよ」なんて言わなきゃ良かったんだ…。 そう、私が言わなければ…私が"変わる"事も…クラネちゃんが死ぬ事も無かったんだ…。 世界樹に近づくと…私達の目は何故か大きな樹ではなく"空"を見ていた…。でもその空は紅くて不気味だった…それはまだ幼い私達の脳が現実を拒むのと同時に現実に恐怖するには十分過ぎる衝撃だった…。 今でも鮮明に思い出せる…あの…アノソラ…。 今すぐにでも忘れたいのに…未だ覚えているアノソラ…。 そこで何が起こっていたかは…絶対に話したくないけど…話さないといけない…。 私とクラネちゃんが空中に浮き…いや、浮かされてるみたいだった…。 怖かった…逃げたかった…死にたくなかった…。 だからその後に…世界樹から声が聞こえた時に…私は…私だけが助かる…いや、私だけが助かるような選択をしてしまったんだ…。