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【韋編悪党】タングル/纏綿の魔女

外に出たい。 塔の上で暮らす愛らしい姫は日々そんな事を思っていた。 でも、自分を育ててくれた魔法使いから、外の世界の恐ろしさを何度も聞かされては外出を許してくれなかった。 自分の髪には不思議な力があるのだと。 それを悪用する奴らが沢山いるのだと。 結局姫は日がな一日を塔の部屋の中で過ごし続ける。外の世界を思い描いた絵を壁一面に貼っては、夢見の様な気持ちで外の世界を思う日々。 そんな、ある日。姫の所へ珍客が現れた。 客は自分の事を大魔法使いと称し、エメラルドの瞳をギョロギョロと動かして、こう言った。 「外の世界に出てみないか?」 それは悪魔の囁き。 それは悪意の蠢き。 悪しき存在の甘言。 だが、外を知らぬが故に悪意を知らぬ純粋無垢な姫は騙されてしまった。 姫の頷きに大魔法使いが薄気味悪く笑った事すら知らず。 愚かな姫は簡単に歪んだ物語の一員となる。 とある森の中で、こんな噂があった。 黒い髪の毛の化け物が怪物を生み出している、と。 それが愚かな姫の末路とは、誰も知らない。