#31-2638 アドニスが疑念を抱き始めたようだ。 先日から、ラウルの里親である■■■家について調べ直している。 彼の疑念は正しい。 問題の孤児は現在、地下施設にいる。 アドニスの『真眼』を欺くのは難しい。 人形や模倣人格では、彼の目は誤魔化せないだろう。 だからこそ、里親として利用する者達は慎重に選別した。 嘘偽りなく、彼ら自身の意思で孤児を引き取らせる必要があった。 自ら望んで里親として名乗り出るよう、時間をかけて誘導した。 アドニスを侮っていたつもりはないが、どうやら詰めが甘かったらしい。 ■■■家の処理は既に済ませている。 土石流に偽装して周辺地域ごと壊滅させたのでこちらに繋がる証拠は残されていないはずだ。 だが、アドニスがそれだけで納得するとは思えない。 このまま調査を続ければ、いずれ真相に辿り着くはずだ。 地下実験施設を発見される日も、そう遠くはないだろう。 今の内に手を打っておくべきか。 叡智の家には引き取り手のいない魔女や異種族の子どもが自然と集まる。 だから可能な限り長く存続させたかったのだが、こうなった以上は仕方ない。 #31-2652 予想通りアドニスは優秀な男だった。 疑いが家そのものに向けられてから地下施設に到達するまではあっという間だった。 だからこそ、騒ぎが大きくなる前に彼を捕らえることが出来た。 あらかじめ用意していた模倣人格を移植した。 これで彼をこちらの意図通りに動かせるようになった。 だが、問題はその後だ。 孤児院の運営をまだ自我が薄い模倣人格に任せるのは難しいだろう。 アドニスという柱が壊れた以上、叡智の家は近い内に破綻を迎えるはずだ。 計画を急ぐ必要がある。 ───スペア・アルファの研究日誌