「私、魔法生物学者になるわ!」 突然葵はそう言うと、どこか誇らしげな表情で俺を見つめた。この姉が突拍子もない事を言うのはよくある事だが、将来について話すのは珍しかった。 「そりゃまた急な話だな。とりあえず理由でも聞いとくか?」 姉は「よく聞いてくれました!」とでも言いたげな顔で言った。 「えっとね、魔法生物を研究すれば、まだ解明されていない魔法の神秘に迫る事が出来るわ!見たことがない魔法を使う生物もいるかもだし。」 魔法馬鹿で知られる姉の事だ、その理由はいかにもといった所だろう。ただ俺は一つ疑問に思い、こう尋ねた。 「しかし何で魔法生物学者なんだ?フィールドワークが多いし、生物を扱う以上危険な仕事だとも聞くぞ。魔導書にかじりついてばかりの姉に務まるのか?」 姉は目を反らし、少し気まずそうに返した。 「それは…その、これから頑張るのよ。」 「まあ、好きにすればいいんじゃないか?姉の評判ならなれない仕事なんてないだろうし。」 その時、俺はとある案を思いついたが、今は黙っている事にした。 そして月日は流れ… 「ど、どうしてあんたがついてくるのよ!」 「何でだ?今一番将来有望な学者に、今一番将来有望な魔法騎士がつくのは当然とも言えるんじゃないか?それに姉弟だし。」 「立候補してこないとそうはならないでしょ!何であんた何かと旅をする必要があるのよ…」 「それは酷くないか?」 俺は姉にやり返せたことを喜びつつ、これからの旅に思いを寄せた。