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【堕ちし星の異界の"元"英雄】イドラ

【消えない沈黙】 堕ちた星はもう戻れない 少し…前のことを話そうか…… とある休みの日、私は家で夫とすごしていた。 休日を満喫して昼食を食べようとした時……事件は起こった…… どっかの国がやらかしたのか、それとも侵略のためか、街の真ん中に神造兵器が複数呼び出されたのさ…… その街に居た冒険者は全員呼ばれた……もちろん私も呼ばれたさ 私は戦いに参加する準備をしてる際に夫はこう言ってくれた 『負けるなよ、イドラ』 私はその言葉に力を貰って戦いに挑んだのさ…これが最後の会話になるとは思ってなかったんだがな… 神造兵器、その名の通り神を模倣して造られた兵器。一体一体のスペックが高いのにそんな兵器が5台も呼び出されやがったのさ 神造兵器との対決によって多くの被害が出たし、途中から私以外の冒険者は皆くたばっちまった そんな中、戦いはさらに激化していったさ。 神造故に『神殺し』が発動しないから持てる全ての強化や、散っていった仲間が最後にかけてくれたバフをフル活用して、全力を叩き込んで兵器共を攻撃したさ…… 硬さ故に長期化し、私は疲弊して立つのもやっとな程だったが、4台を破壊して残り1台も何とか足を切り飛ばしたのさ…… だが、兵器が完全に破壊された訳じゃなくて、残った腕で街の3分の1を抉って投げやがった…… 何時もなら細切れにできるが、フラフラの私では真っ二つが限界でその飛んできた街を真っ二つに切り裂き、最後の気力で薔薇の剣を投げて兵器を貫いき戦いを終わらせたのさ。 だがこの判断が間違っていたのだ 私が戦っている頃、夫は他の住民を誘導しながら避難していた。 その時、投げられた街が空中で切られ落ちてきた。 本来なら当たらない軌道だったが避難民の中に私を恨んでいる奴がいたのだろう。 しかも最悪な事にそいつが強化系の能力持ちっていうね。 夫は後ろから一瞬で縛られ、身動きが取れないまま落ちてくる街の瓦礫の下に投げられてそのまま潰された。 遺体も残らない、半分に斬ったとはいえ街の6分の1の大きさの超重量による圧迫での即死 私がその事を知ったのは戦いの終わりから2時間後だった。 私は急いだ。過去最速の速さで瓦礫を走破しその場所に着いた。 何故場所がわかったか?理由は数ある瓦礫の中でマフラーが見えたからだ。 そのマフラーは私が編んで、3年前の誕生日にあげて以来ずっと大事に使ってくれた彼の大切なもの。 私は崩れ落ちた。今まで折れることのなかった自我も役に立たない程に私は泣いた。 その日は流星群だったな…… 私は夫を突き飛ばした奴を探した。私の持っている人脈をフル活用して探していた。 なんのために探したのか、その時は分からなかった。 どんな人間なのかを見るためなのか、それとも何がそこまで私を恨むことになったのか、何故夫を狙ったのか、何故私じゃないのか そして3日後にその人間を見つけた。 見つけたが、そいつは瓦礫で転け、頭を打って死んでいたようだ。 私はその時、心の中が怒りで染められていた。 ふざけるな、なんでお前はこうやって逃げるのだ、と心の中で思っていた。 そして気づいた、私は復讐しようとしていたと。英雄と呼ばれる人間が、たった一人のために復讐しようとしていると。 その時、私の心の中で何かが切れた、重要な何かが… その後、私は自分に恨みを持つ者を探し出し、様々な方法で消していった。 社会的方法やそいつの今までの功績、そして時には物理的に。 数少ない仲間は私を止めようとしたが、私はもう止まらない、止まれなかった。 私は最後まで止めようとしてくれた仲間達から離れていった。 最後まで止めようとしてくれていたが私はその声を振り払った。 私はあの人を心から、本当に心から愛していたから たとえ後ろから刺されようとも。 自身の名誉に泥をつけられても。 全てを奪われようとも。 愚者だと罵られようとも。 私は止まらない。止まれない。止まる気はない。 流れ堕ちた星はもう二度と、空で光ることはないのだから。 沈まぬ昼はない 堕ちた星は見られることはない だが拾い上げられた時 星は今一度輝きを放つのだ