「葵くん、これって……」 鳶田の足元に、6つ脚で4つ腕の謎の異形が倒れている。鳶田が視線を向けた葵という人物はこの倒れた異形を見つめている。 「ああ。十中八九、俺たちがさっき拾った「あの光」と関係してるな。」 「あの光…今日は星なんて一つも見えてなかったのに、急に流れ星が流れたみたいに空に現れて、僕たちに向かって落ちてきたんだ。」 鳶田が顎に手を当てて思考にふけっている。隣で葵が「あんまし空見てなかったから、気づかなかったな…」と呟いたのも聞こえないぐらいには、今回起きたことを整理しようとした。 「どうだ?考え、まとまったか?」 「いや。全くだよ。ただ解るのは、僕たちの持っているこの力は「存在しちゃいけないもの」ってことだけ、かな。」 鳶田はそう言うと足元の異形に目を向け、「きっとこいつも星に何か影響されたんじゃないかな。」と呟く。 「星?」 「あ〜、全員がこういう力の授かり方をしているなら、星と呼ぶのが1番洒落てるかな…ってさ。」 鳶田は葵の疑問に対してわりとしょうもない理由を返す。 「お前たまにめちゃくちゃしょうもないよな。普段データがどうこう言いまくるくせに。」 「は……いや……コホン。それよりも、この星が無差別に堕ちてくるのなら、心配なのは彼女だ。」 「鳶田お前、こんな時でもあいつの心配か…」 葵の軽蔑するような視線に対し、鳶田は怒って返す。 「こんな時って、僕にとっての最優先事項は双葉さんの安全だけだ!君みたいに恋愛に無頓着なやつには解らないだろうけれどね!?」 「いつまで経っても告白すらせずにストーキングと盗撮を続けるのが恋愛ってなら、俺は別に一生知らなくてもいいな。」 怒って口撃した鳶田に強烈なカウンターパンチが飛んでくる。ただの厄介ストーカーである鳶田の恋愛事情など考えたくもないのだろう。 「いや…それは!双葉さんのデータを収集してから告白した方が確実性が……!」 「月蔵、あいつ言ってたぞ。鳶田は元々好きだったけど、ストーカーされてるの気付いてから恋が恐怖に変わったってな。」 「………ォ………」 カウンターパンチにカウンターしようとした鳶田に向かって強烈なアッパーがぶち当てられ、ついにK.O.される。葵はあまりのショックで倒れた鳶田の服の襟を掴み、引きずって鳶田を家へ帰した。 ____________ 「ストーキングは怖いですけど、やっぱりあの人はあの人なんだなって思えて…もっと愛おしく思えちゃうんです…あ、絶対に測くんには言わないでくださいよ。」 鳶田が恋心を抱いてる女性、月蔵双葉が両手で口を隠して目を逸らし、顔を少し赤らめながらそう告げる。 「あ、ああ。鳶田には言わないでおくよ……」 ____________ 少し前のことを思い出し、帰路についていた葵は笑みを浮かべる。 「はは…どっちもイカれてて、お似合いだな。」 思いがけない事象が起き、知らぬ間に月蔵双葉も「星」の騒動に巻き込まれることになり、そしてその彼女が「全ての元凶」と最も親しい関係になることなど、この世界の誰にも、神ですら知る由もなかった。