リヴァイアサンに付き従うセイレーンの軍団の中でも、とりわけ実力の高い二体。歌劇を邪魔する不届き者を徹底的に追い詰める。彼女らだけでユニットとして活動することもあり、感情を揺さぶる合唱は海の魔物たちに広く愛されているらしい。 檻から逃げ出した。 罰から逃げ出した。 生きねばと思った。 死にたいと思った。 海に着いた。どうしよう。 海に着いた。溺れられる。 終わりだ。 終わりだ。 水柱が、曇天に轟いた。龍は高く昇り、暗雲を拓いた。――誰もが見惚れる姿だった。誰もを放心させる舞だった。演目の最中、龍の透き通った双眸はただ二人を見つめる。 生死など、人の身であることなど最早どうでも良かった。少女たちは初めて抱いた憧れに、心も体もすべてを委ねると決めた。