ログイン

柳楽 龍之介

人の姿をして生まれた、龍の王。 「龍は誇り高き種族である」 と考えている。 王として君臨しているものの、支配はしておらず、民には基本的には自由にさせている。 表には出さないだけで、人間を異様なほどに憎んでいる。 かつて、柳楽たちの国、【龍界】は人間と深い交流を持っていた。 【龍界】でしか採れない特殊な鉱石が人間たちに必要であり、また【龍界】にはなく、人間の国でしか得られないものが多数あったりと、 利害が一致したため、交流を開始した。 貿易をしたり、お互いに自身の国を観光地として売り出していた。 ときには、天災や戦争などで住む場所を無くした人間が【龍界】に移住してくることもあった。 人間の子どもたちが【龍界】で遊んだり、また 龍の子どもたちが人間の国で遊ぶのも当たり前だった。 柳楽が人の姿をして生まれたのも、当時の、とある人間と王家の龍が婚姻を結んだからである。 柳楽は幼い頃から、父から 「お前の力は、龍を、そして人を守る為にあるんだ。使い方を間違えるなよ。」 と教えられてきた。 母からは 「王様になっても、何にも縛られず、自由に生きなさい。それだけで、母さんは嬉しい。」 と言われた。 年日は流れ、柳楽の両親は亡くなり、柳楽が【龍界】の王となってしばらく経った頃のこと。 龍を忌み嫌うカルト宗教によって、【龍界】が襲撃される事件がおこる。 本来であればカルト宗教がいくら武装したとて、龍と人間では力の差が天と地ほどの差がある。そのため、カルト宗教は呆気なく敗れ去り、壊滅する・・・筈だった。 しかし、カルト宗教の信者たちは、【龍界】の人間や、【龍界】と深く関わっていた人間たちを操り、肉盾として利用しながら奇襲を仕掛けた。 この頃にもなると、龍と人間との関係は固く、深いところで結びついており、【龍界】の龍たちのほとんどが人間と深く関わっていたおり、友情や愛情、中には恋情も抱いていた者もいた。 カルト宗教だけならば速攻で排除できた。 しかし、【龍界】と深い関わりを持つ人間が、 これまで友として、仲間として、家族として接してきた人が、肉盾として利用されながら奇襲を仕掛けられたため、多くの龍は安易に攻撃できず、その隙を突かれ次々に殺されていった。 中には肉盾ごと殺せた龍もいたが、その龍は 絶望感や自責の念から戦意を喪失し、重度の鬱になった。 柳楽自身も前線に出て、戦っていたが、やはり 攻撃を仕掛けることが出来ず、防戦一方だった。その時、肉盾の内の1人 ―柳楽とは親友であった― が言葉を発した。 うわ言か、操りが一瞬解けたのか・・・その言葉は柳楽の耳に確かに届いた。 「ころ・・コろシ ― こロ・・テ・・し ― ・」            「殺して」 そこから、柳楽自身の記憶はあまり残っていない。 ただ、数多の肉塊を潰し、切り刻み、焼き尽くす感覚と、血や肉が飛び散る音、誰かの醜い断末魔、そして人間が侵略してきたことは、いやに記憶に残っていた。 翌日、柳楽はショックから記憶を無くした。 【人間が侵略してきた】ということだけを残して・・・ そして、【龍界】の人間は、全員いなくなった。 この事件は人間界の間でも、前代未聞の虐殺事件として、世界各地で報道された。しかし、事実は脚色されており、まるで龍が人間を突然襲い、一方的に虐殺したという風に報道された。 正しい報道をしたマスコミもいたが、その意見は、圧倒的な多数意見によって押し潰され、挙句の果てには、正しい報道がデマだという意見が支持されるという有様だった。 この事件をきっかけとして、人間から龍たちへの信用は完全に無くなり、【龍界】に立ち入る人間は、ほとんどいなくなった。 また、柳楽と生き残った龍たちは人間を全く信用しなくなり、人間を憎むようになった。 しかし、人間界の風景や食べ物が、どこか懐かしく感じる時があるので、姿を変えて人間界に行き、各地を巡っている。 その時に魔物に襲われそうになっている人間を見ると、無意識のうちに助けている。 (何故かは柳楽自身も分からない)