彼女は、聖女であった。 彼女はシスターをしていた。完璧なまでの美しさを持つ彼女は、皆から聖女と呼ばれていた。 富める者達は聖女が大好きであった。老若男女が大聖堂にやってきて、聖女と共に神へ平和を願っていた。 聖女は、優しかった。何があっても笑顔で、温かかった。 しかし、聖女は心の奥底に負の感情をしまい込んでいた。聖女も一人の人間、不満を抱えることは必然だ。 聖女は、セクハラ紛いの懺悔や、大聖堂で暴れまわる老人等、迷惑な人間に心底困り果てていた。 さらに、富める者が多くの物を独占するがために食料等の供給が減り、神への供物が難しくなって、最終的に自らの髪を少し切って捧げる等色々苦しくなっていた。 そんなある日、年に一度の祭りである吸血鬼ル祭に向かう人を見送りし神へ祈りを捧げていると、多くのバタバタとした足音が聞こえた。 見てみると、そこでは人々が一人の吸血鬼の少女に追われて血みどろで逃げている。 人々は情けない叫びを上げながら逃げていた。 その日、聖女はよく眠れた。 後日、学ばない阿呆な富める者は吸血鬼狩りを始めた。 吸血鬼だと思われた者は片っ端から処刑されていった。 老婆がチェンソーにより殺されたこともあれば、3歳ほどの少年が殺されたこともあった。 殺された者は悔しかっただろう。しかし、堕落者になるへ至らなかった。それが、阿呆を調子に乗らせた。 そしてとうとう、その矛先は聖女へ向いた。 美しき身体や顔、綺麗な目、少し尖った犬歯、白い肌。 それらは盲目な阿呆にとって吸血鬼としてぴったりな見た目であった。 聖女は男達に酷く殴られた。それでも聖女は笑顔を崩さなかった。 それを気味悪く思ってか、聖女を殴る手はより強くなった。 最終的に、聖女は磔にされた。近くには処刑用のチェンソーが立てかけられている。 聖女は目玉を抜かれた。それでもなお、笑顔だった。聖女は度を超えて優しいのだ。 しかし、たった一つの行動が、聖女の心の瘡蓋を抉り取り、怪物を解放させてしまった。 阿呆な中年程の貴族の男は、こんな状態の聖女に下心に溢れた汚らしい手で触れたのだ。 聖女のしまい込んだ感情は、限界に達した。 怒り、憎しみ、悲しみ、絶望、恨み、失望。 台は破壊され、聖女は断罪の刃を手に取った。 心優しき聖女により、全ては血の海と化した。 聖女は堕落した。 彼女は理性を失っていない堕落者(ダークサイド)である。 話すことができ、理解し合うことが出来る。