甘えるな、負けるな、魔王を殺せ、絶対善意を貫け 【勇者の訓戒】 この少年もまた勇者となった。 それは父も母も知らぬこの時代ではありふれた貧民窟生まれよこの子供にとって人生を変えるには十分すぎることであった。 内から溢れ出した光はたちどころに彼の垢と煤に塗れた体を浄化し、光源もなく新月であった貧民窟を温かな昼間のように数秒間照らした。 次の日から少年は単なる国の外郭にある不安分子の一つからこの世界で最も羨まれる存在へとなった。 その肩書が望むように その名誉が望むように その心が求めるように 人々のために 魔物を、魔族を、魔王を、 殺し続けた されども一つの汚れが一つの勇者に変わっただけだった どの人も彼を一人の人としては見なかった 模範的な勇者 力を持つものの当然の義務 或いは全てを守ることができなかった失格者 少年も気づいていた 最初から知っていた 気づきたくなかった 誘惑とは魔族や魔王の常套手段であり、多くの場合は富や力、はたまた奇跡であったりする。 勇者もまた人であり、悪を狩るつもりが悪に取り入られることなどは日常であった。 魔王の数だけ誘惑があり、勇者の数だけ弱点がある この勇者は 貧民であったが故、 過ぎた富 を望まず 純粋であったが故、 不相応な力 を望まず 絶望していたが故、 希望 を信じなかった しかし、 貧民であったが故、 日常 を望み 純粋であったが故、 真実 を望み 絶望していたが故、 安寧 を求めていた そんな心を見つけた魔王に嘘偽りない"真実"を見せられ、"歪んだ日常と安寧"という誘惑を受けた勇者にそれを拒絶しろと命じるほうが酷なのだろう。 無数の魔王と勇者が氾濫したこの次代ではまま見られた光景である。 とある勇者の"【鑑定】"結果 { 名前:レオン・ヴァイン・オブリビオン 種族:半幻魔族 職業:元勇者 【鏡の魔王】の配下 } { 【半幻魔族】 (ハーフイリュージョナー) 危険度:A- 人族類が膨大な幻魔族の魔力に被曝することで後天的に幻魔族に近い存在へと変異した存在。 通所の幻魔族と同様に肉体の変質能力や極め高い物理攻撃への耐性を持つがいずれも本来の幻魔族よりも低水準で収まっている。 }