亜神の使徒たるマイゼルライヒ一族。 神祀り四家と異なり特殊な力を引き継ぐのではなく、神も魔も人も等しく共存を、という思想を繋ぐ者達。 その中でもヘルネは魔王制中期の暗黒時代に産まれた悲劇のお姫様。 まだ神や魔が大きな力を持ち、人々に加護を与え奇跡を起こしていた時代、彼等は今よりも身近で現実的な存在だった。 中央大陸東部に存在するマイゼルライヒ王国でヘルネはその出産時、幾柱もの神々が祝福し妖精の歌声に包まれて産まれてきた。 戦乱の時代ではあったが、その思想から数多の種族が集まるマイゼルライヒ王国は争いとは離れた平和な国だった。 そこで国王や騎士達に見守られながら健やかに育ち、物心がついてからは神の声を民に届け、薬に役立つ植物を与えたり、新たな水源を見つける巫女だった。 周囲に愛され、少女自身も人々と神々と魔を愛していた。 しかし、本来加護以外で人間に干渉することが出来ない神々の声を聞く力を"聖庁"は恐れた。 唯一神を信仰する彼等にとって、他の神々は等しく邪神であり、その邪神達の信仰を冗長するヘルネは危険視された。 故に彼女は13歳の時、聖庁に攫われた。 絶大な権限を持ち、また平和主義であった王国は彼等との戦争を忌避してヘルネを取り戻すことが出来なかった。 それから5年後、聖庁による宣教軍が王国に襲いかかり、そこには変わり果てたヘルネの姿があった。 「お久しぶりです。お父様、お母様。ええ、ええ、元気です。それはもう、今も唯一神様の声が聞こえていますもの!私は目が覚めたのです。穢らわしい邪神達ではなく、唯一神様こそ唯一の神であると! わたくしが痛くて痛くて悲しくて泣いても彼等は助けてくれませんでした。でも!唯一神様だけはわたくしを救ってくださった!その愛でわたしくしを守ってくださった! お父様もお兄様も早く目を覚ましてください。唯一神様こそがただ一柱、真なる神であると。 ……早く殺さないと、痛いの、お腹がずっと痛いの」 数多の拷問と洗脳により元の人格は壊れ、そこにいるのは唯一神に全てを捧げる敬虔な少女、いずれ神を産む聖母だった。 ※【聖母】の加護について※ 吐き気がするような力なので読まずに戻っても大丈夫です。 加護【聖母】 未来において英雄・賢者・聖女・使徒・神を産む運命にあるものへ付与される全ての神々による祝福。 "腹の中に子供がいる限り、何人たりとも彼女を傷つけることは出来ない"。 ヘルネはこの加護を三年前から"間はありながらも"ずっと有している。