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【征神の銀狼】マリア・テルドルス

マリアは現代から三千年以上も前に生まれ、〈英雄王ルリアス〉に仕えて、【魔術大戦】と【第一次征神血戦】を戦いそして生き残った12名の英雄達の一人であり、強大な力を持つ七体の魔族【七帝】の一人 マリアはナグサダール大陸の中央諸国の小さな獣族の集落に生まれた 子供の頃の彼女は本当に何の変哲もないどこにでもいる普通の少女であり、彼女自身何者にもなるつもりは無く、人と魔族が共存していた当時ただただ平穏に生きていた しかし彼女が18歳の時、別の高次元の時空に存在する【テンブルクス】という異次元に蔓延る邪神を崇拝し、その邪神達を【認知の門】という術式によってこちらの世界に引き入れようとする【テンブルクス教団】と、術式の起動を防ぎ邪神から世界を守る為多くの国や英雄達が手を組み結成された【カルカタール連合】の間でナグサダール大陸を含めた五大大陸全土を巻き込み勃発した【魔術大戦】の戦火に巻き込まれたことによってその人生が一変することになる 【認知の門】とは五大大陸全土の地脈や龍脈に術式を刻み付け描かれる召喚術用の巨大な魔方陣であり、彼女の集落はその陣を描く上で実に重要な場所に位置してしまっていた それが邪魔であった教団は兵を派遣すると集落を焼き払い、剰え住人達を惨たらしく鏖殺した 偶然狩りで集落にはいなかったマリアは生き残るが、教団の兵が去った後木材や人の肉が焼ける匂いが漂うかつての故郷の中心でただ茫然と座り込む事以外に出来なかった そうして、仕事を終えた教団の兵達は撤収を始めるが、しかしその前に一人、立ちはだかる者がいた その者はただ一人で百を超える教団の兵に挑み、これを、瞬きの間に壊滅させた そしてその者の、圧倒的すぎる力を前に恐れ慄いたある兵が逃げ出し己が焼いた集落に引き返すと、そこで茫然自失となっていたマリアを発見し、更に兵は彼女を人質に取った そうして、兵は人質に取られてなお、まるで人形の様に静かなマリアの首に刃を突きつけ、醜い脅しを喚きたてるが、しかし、その者は稲妻を超える速さで兵のみを右手に握った聖剣で斬り捨て、傷一つ付けることなくマリアを救い出した そして、これがカルカタール連合の盟主であり数多の英雄の頂点に立って、彼らを束ねる【英雄王ルリアス】とマリアの出会いである その後彼に引き取られた彼女は暫くの間視線を虚空に向け、誰とも口を利かず食事すら取らなかったが、ルリアスや彼の仲間達の献身的な看病のおかげで次第に立ち直り、完全に心を取り戻した彼女は教団と戦う事を決意して、血が滲むような鍛錬を始める その後彼女は初陣である【ヘトゥン・エールの会戦】で、一人広大な戦場を駿馬を超える速さで駆け巡り、敵軍を率いていた将を十人以上討ち取り、更には敵陣の最奥で敵方の総大将とその近衛騎士十五名を同時に相手取り、全員を単独で討ち取るという、正に鬼神の如き武勲を挙げ【銀狼マリア】の名を敵味方両方に轟かせた そしてその戦いの後、元々彼女の潜在能力を見抜いていたルリアスは自身の直属の精鋭であり今まで9名しかいなかった【神狩騎士】へと彼女を取り立てる その後彼女は10人目の神狩騎士として世界の為に、そして恩人であり想い人でもあったルリアスの為に戦い多大な戦果を挙げていくと、ついに彼女は今まで誰も握る事すら叶わなかった【滅剣ヴァルティキラ】に主と認められ、カルカタール連合でも最強の英雄の一人となる また滅剣を手にし、誰もが認める英雄となったマリアは、その時に今まで大勢から慕われながらも孤高の存在であったルリアスの隣に立ち彼を支える者になる事を決意する その後、仲間達の後押しや互いに想いを寄せていた事もあって、マリアとルリアスは結ばれ皆の祝福の中夫婦となる 夫婦となった彼らは本当に仲睦まじく、当時の彼らは何処に行くにも常に共にあり、当時の仲間達。こと他の神狩騎士からはその仲の良さに、少々呆れられる事があった程のおしどり夫婦であったようだ その後2人は数多の強大な敵との戦いを制していき、遂には教団を追い詰め【コールバレーの決戦】に挑む この戦いは終始、連合側で有利に進みついに【教祖ヴェルディモ】を討ち果たす 遂に敵の首領を討ち取り、【魔術大戦】に勝利した彼らの勝鬨はしかし、長くは続かなかった 突如として強烈な地響きが五大大陸全土に発生し、地下からは血の様な深紅の魔力の壁が天を貫いて聳え立っていた この決戦はヴェルディモの罠であった ヴェルディモ達はこの戦いでワザと戦死し、自らの流れ出た血と死を供物にして、【認知の門】の起動を成功させたのだった そうして起動し【テンブルクス】へと繋がった門は、【天蝕神龍ヴァルナカエル】という一柱の邪神を召喚した 龍はまさしく天災の化身であり、空は暗雲で覆われ、世界は決して止むことのない嵐に襲われる しかし、ルリアスとマリアは絶望しなかった。彼らは直ぐに軍を本拠地に撤退させると、迅速に邪神を討伐する為の戦支度を始める。世界中の国や英雄達に文を送り、時には自らが語り掛けることで戦力を集めていった そうして編成された【神狩騎士団】は10万を軽く超え、こうしてナグサダール大陸西部の【ザンブバルド山脈】の頂上の遙か上空に陣取った邪神を討つため出征した こうして開幕した【第一次征神血戦】は苛烈を極め、邪神の人智を超えた力の前に、大勢の英雄達が次々と命を落としていき、遂にはルリアスが己の命を代償に邪神を封印した頃には、生き残ったのはマリアを含めてたったの12名だけだった そうして大勢の仲間や心の底から愛していた者を失ったマリアは絶望するが、それでもルリアスの遺志を継ぎ彼が守ったこの世界を、いづれまた【認知の門】から現れるであろう邪神からずっと守る為に不老不死の呪いを自ら受け、未来永劫戦い続ける事を決意した そうしてマリアは【英雄王】の後継者として邪神へのありとあらゆる対策を行い【第一次征神血戦】から二百年後、ついに門から新たな邪神【獄炎神鬼マガツホムラノミコト】が現れ、迎えた【第二次征神血戦】にてこれを見事討ち果たす事に成功する こうして、邪神に対抗できることを人々に証明した彼女は数千年もの間、最愛の人を失った悲しみと孤独に苛まれ続けてようと、幾度も勃発した征神血戦で常に最前線に立ち幾つもの邪神を屠り続けてきた しかし、それは永遠には続かなかった 今から五百年前の【第十四次征神血戦】にて召喚された【人悪神ヴァールヴァーナ】はこれまでの邪神とは異なり実に狡猾で戦略家であった ヴァールヴァーナは現界するなり、己の権能を出し惜しみする事無く使用して人類の記憶を操作すると、マリア達魔族と敵対させ、自身は当時人間を束ねていた【聖騎士王ウィリアム】の肉体を乗っ取り、【聖テンブルクス教騎士団】を作り上げ魔族の殲滅を開始した   またこの邪神は今まで邪神を討ち果たしてきた上、不老不死であるマリアの事を特に警戒し、彼女の弱みを握る為、当時の彼女の従者の肉体を乗っ取りマリアヘ近づくと彼女の記憶を読み取った マリアのルリアスへの想いを知ったヴァールヴァーナはルリアスの姿を完璧に再現して彼女の前に現れる 無論、本来ならばどれ程完璧にルリアスの事を再現しようと、彼の事を心の底から愛し、今も尚思い続ける彼女を騙す事など不可能であった だが、当時、続々と彼女の耳に入ってくる戦の敗走と自身を信じて着いて来てくれた者達の戦死の報や、己が護るべきであった人々を邪神から守れなかった事の罪悪感と自責感で、二千年間もの間強い使命感でギリギリ保たせていた彼女の精神は限界を迎えてしまっていた だからこそ、彼女は二千五百年のもの間、何度も夢に描き、そして諦めた【最愛の人との再会】という存在しない筈の奇跡に、ほんの僅かに縋ってしまう そうして生まれた一瞬の隙をついて、ヴァールヴァーナは己の腕を失うことも顧みずに滅剣を奪い取ると彼女の心臓に突き立てた。そして不死に特攻を持つこの剣によってマリアは生死の境を彷徨う致命傷を負ってしまう 彼女を失うわけにはいかない魔族達は撤退するしかなく、そのままナグサダール大陸最北端の【暗黒半島】へと後退する事となった それから彼女は何年も意識を失っていたが、五百年経った今、彼女は目を覚ました そうして、彼女は再度邪神から世界を取り戻すため。そして自身の愛する者を冒涜したあの外道を屠る為、現在戦支度を整えている最中である